「倒去レ婁――――目を青光る蝶」
「ず~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ぐづァァァアッッ……!!!!!」
――右目だった。
『!?』
「ぢぎィッぶァ゛、 ァ!??! ヌ゛、ご、ォ……ォ……!?」
右目。
右目。
右目が痛い。
痛いなんてもんじゃない。
痛いんじゃなくて――――見える。
見える。
何が見える?
何が見えている?
何が、起こる??????
「 」
「」
赤銅の閃電が、辺りに散る。
それは痛みに叫ぶ自分の声だと思った。
しかし声の主が俺だけでないことを、引き千切れそうな鼓膜の痛みで知ることになる。
「……!!」
首へと振り下ろされたナイセストの鎌剣が首に負けて砕け散る。
城を破壊せんばかりに雄叫びを上げるバンターに、これまでこの世界で感じたことが無い程圧倒的なエネルギーが集まり、集まり、集まり――
――トルトは、きっとこれをたった一人で抑えていたんだろう、と悟った。
「ッッッ!!!」
「ッ!?、ティアルバーッ!!!」
倒れた俺の傍らでナイセストがバンターに首を掴まれ握り潰された。
「イヤアアアアアッッ!!!――――ぁ、」
――ナイセストの首が繋がる。
闇夜に溶けたように黒くなった――――バンターに首を掴まれ咄嗟に闇精化したナイセストがバンターを離れ掴まれた。
「あは
ぁ。
足りないわぁ」
「ッッ!!!?」
「――――」
精霊化しているのに、ナイセストは、体を、掴まれていた。
「――こいつ、何――――」
ナイセストが心臓を貫かれる。
「ぐっ……!!!」
――いや違う。
あまりのスピードで放たれた拳に、ナイセストが体を限界を超え「く」の字に曲げ――――無音で滑空。後轟音。崩落音。
ナイセストはあっけなく、天高く城外へ殴り飛ばされた。
体が浮く。
「!?」
「ちょ、ちょっと――アンタっ!」
視界で揺れる金砂の髪と声に、ココウェルと共にシャノリアに抱えられていることを何とか認識する。
未だガンガン痛む頭、グラグラと揺れる視界の中、シャノリアが急速にリリスとヴィエルナに近付追いつかれる。
「ねぇ
どこへ いくの? ?
?」
「逃げて……殿下逃げて、くだッッ――」
床に押し付けられるシャノリア。
顔面の前で振り被られる蹴り。
障壁を展開し飛び込んでくるリリスティアとヴィエルナに支えられたマリスタ。
その蹴りの延長戦にいたココウェルに、ただ飛びついて物理障壁を展開。
「もっと
絶望を 舞台
へ」
複数の障壁が、全て粉々に砕け散る。
「きゃあぅッ!」
「ッッぐ!あぁッ……!!」
背を石造りの何かにしたたか打ち付ける。
それは玉座。
ただ一つ崩落せず残った壁に張り付くように存在する、王の座す場所。
降り注ぐは雨。
ナイセストが吹き飛んだことにより空いた遥か天の穴から覗く曇天が落とす冷温。
視界さえ薄れる程の闇の中。
シャノリア達も城外へ吹き飛ばされ、王女と俺の二人きりの世界の中。
「足りないわ足りない足り足り足り足りたりたたりりりりりりりりりりりりり
、ィ」
バンターの眼は、翅脈のように両眼とも罅割れていた。
 




