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「倒透――――土気色の身体、」
「刺さった……!?」
「――――」
「…………」
ココウェルの驚きの声。
手応えを感じる。
俺の拳程もありそうな腹筋に突き刺さった氷剣はしっかりとバンターを貫いていて、
「ッッっ、……か、ァッ……!」
――バンターはかつて見せたことの無い、崩れ落ちそうな弱々しい表情で、込み上がってくる吐血を抑え込もうと体に力を込めていた。
そうして立っているだけで、精一杯な様子だった。
いや、最早立っているのはナイセストの――
「――……」
黒光りする闇がバンターの四肢から外れていく。
それに引っ張られるように前のめり、バンターがその頑健な体に膝を着かせる。
倒れる。
あんなにも最強だった男が、全ての力を失って今倒れようとしている。
砂と血に汚れた土気色のその顔に、よく見れば生気など欠片も無い。
干からびた血の痕と、濁ってなにも捉えていない右目など既に死体のよう。
その青白く裂けて光る左目以外は、何も彼の身体に――




