「裂武――――天元の恐怖」
「ッ゛ッ゛ッ゛ッ゛ッ゛ッ゛ッ゛ッ゛!?!?!???!??!」
『!!?』
バンターが突如獣の断末魔のような金切りの苦悶をあげ、膝を屈する。
あわせ疼いた眼球が破裂してしまいそうな呪いを、血管が弾け飛ばんばかりに頭に力を込め、やり過ごす。
「……ッッ、がぁッ――!!」
「アマセくんっ!――どうして急に――」
「効いた……んですの?」
「判りません。ですが確かなのは――押せばやれる、ということだけです」
「――上級魔法用意! 踏ん張りどころですわよ!」
『はっ!!』
疲労のにじむ声で、魔術師達がめいめいに上級魔法を唱え始める。
きっと効果が無いわけではない。
いくら奴が魔法とは体系の違う術理――練気とやらを使って戦っているのだとしても、魔法が全く効かない訳はない。
現に奴はギリートから受けたと見える大火傷を未だ体に残している。
問題は、奴がそれをものともしない――
――いや。
最早奴に、ものともするような痛覚は――
「、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 リシディアァアァアッ――」
「掃射――」
「リシディアァアァアァアァアァアァアァアァアッッッッ!!!!!!!!!」
空気が軋み。
鼓膜が破れ。
――たかと錯覚し。
その間隙に、バンターは魔術師らの中央へ移動、
『!!!』
「イミ――!!!!!」
イミアの頭部を握り潰さんと手を伸ばし――――その手をガイツ・バルトビアが掴んだ手が一瞬でガイツの手を握り潰した
「ッ! 兵士長っ」
「時間を稼ぐッ!! 体勢を立て直して上
級、」
――――――一瞬も。
一瞬たりとも拮抗せず、ガイツの左手が原形を留めない程ひしゃげ果てる。
「ぎ――ァ、」
「邪魔だ」
握り潰した左手を引っ張りながら、
「消えて失せろ。リシディアァァアアァァァンッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!1!」
ついてきたガイツの胴が、バンターの右に打たれた。
――――――ココウェルの悲鳴が、聞こえた。
吹き飛び転げた体勢のまま、何が起きたのかを考える。
耳鳴り。
俺の目の前で、バンターがガイツを殴った。
遠くで崩落音。
ガイツは吹っ飛んだ。
まだ続く崩落音。
後ろのイミアも一緒に吹っ飛んだ。
長い長い崩落音。
……尻が上になった間抜けな体勢から起き上がり、確かめる。
ゆっくり歩いて確かめる。
「ふゥ゛――――――ッ、ふゥ゛――――――ッッ、」
「……………………
…は?」
……………………壁の向こうへ。
その壁の向こう、の向こう、の向こう、の向こう、の向こう、
の、外へ。
否。
外の外の外の外の、外へ。
吹き飛んだガイツは、王城の壁をすべてブチ破り――――王都の建造物全てを貫通して、遥か遠くの外縁の森で土埃をあげている、ようだった。
「・・・・・・・」
ぼて、と足元に何か落ちる。
それが握られていた、そして殴った衝撃で千切れ捥げたガイツの左腕であることに気付くのには、少しの時間がかかった。
「・・・・・・・・・・・
・・・・・・・ ?」
……………………。・・力、とか。
強い、とか。
最強、とか。
勝ち負け、とか。
何の意味がある? この力の前で。
「………………ァア、」
顔を上げる。
「ァァアアアアアアァァァァアッッ、」
「アマセ君ッ!!!」
青き亀裂の眼球と、目が合った。
「――アアアアアアアアアァァアアアアアアアアアアアァァァァアァアァァァァァッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!?」
「アマセ君ダメッッ!!!!」
氷剣を、錬成し。
バンター・マッシュハイルに、打ちかかる。




