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「尊い人と卑しい人」

「……そう、ですか」



 ココウェルが納得したようにつぶやく。



「あれはとんでもない実力者でしたよ。手負いとはいえ私や魔術師長、兵士長と騎士で同時に挑んだのに――傷一つ付けられず。あっさりノジオス・フェイルゼインを殺されてしまいました」

『!!』

「……死んだのですか。あの男は」

「はい。首を切断されては、どうにもできず……申し訳ありません」

それ(・・)には息子がいるという話だったよな、サイファス。息子は関わってなかったのか」

「いや、関わっていた――オヤジよりも救いようのない悪事に手を染めてな」

「……殺されたのですか。その息子も」

「ええ、まさにその時だったんです。俺達全員を倒したバジラノが、息子を殺そうとしたとき――奴は急に、何か焦った風に立ち去ったんです」

「城にいた、もう一人のバジラノの者が伝えたのでしょう。『彼女』の危機を」



 ココウェルが訳知り顔で言う。



〝質問を変えますっ――――貴女は誰ですか(・・・・・・・)?〟



 ――ああ。

 ようやく、話の流れが見えてきた気がする。



「? 殿下、彼女とは」

「あなた方の所にいたバジラノは、城へと駆け付けたのです」

「え……城にですか?」

「商業区から城まで、結構な距離があります……あの『アサド』と呼ばれた者は、あまりにも早かった」

「……あのバジラノ人の女性を助けるために、必死になって駆け付けた……」



 あの一瞬、ココウェルをみすみすかすめ取られたリリスティアが得心がいったように言う。うなずくココウェル。

 サイファスが信じられないといった様子で眉をひそめる。



「……このテロ計画のすべてを話してしまうかもしれない、重要な人間を捨て置いてまで、そんなことするんでしょうか? 味方を裏切ってまで、父親は確実に始末したんですよ?」

「……それほどの人(・・・・・・)、だったのですね。貴女(・・)は」



 誰へ向けるでもなくつぶやき、王女が遠くへ目を向ける。



 きっと、あのバジラノの女は――



「――それじゃあ、エルジオ先生。その見逃された息子は、捕まえたってことですか?」

「……情けない話だけど。さっき話した通り、俺達は残らずあのバジラノ人にやられて……全員気絶していたようなんだ。目を覚ましたら、もう息子は。……重ね重ねの失態、大変申し訳ありません。殿下」

「いいのです。よく生きていてくれました。本当に」

「恐らくは捨て置いても、当分問題は起きないと思われますわ」



 ペトラらと話し込んでいたイミアがとんがり帽子を取り、ココウェルに話しかける。



「……私も同感です、殿下。とらる器の小さいガキがたった一人生き残って、何ができることもないでしょう」

「そ。そんな人物だったのですか」

「言葉は悪いですが、殿下。このイミア・ルエリケ、あんなにも愚かなサルにはついぞ出会ったことがありませんわね」

「サルに失礼ですよ、魔術師長」

「ええ。まったく思い返すだに胸糞むなくそ悪い……」

「本当に。あんな畜生が自分と同じ人間だとは思いたくない」



 ……散々な言われようだな。

 どんな男だったんだ、ノジオスの息子。名前はなんといったかな。


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