「プランAの果て」
「……! お爺様を……!?」
「そうか……殿下よりも陛下の方が」
「――――」
『……もう聞き飽きた。交渉に応じないのなら――』
「そしてそれこそが!……お前達がココウェルを殺せない、そして城で何かを探していた根拠になるんだ」
『!!』
「!?」
ペトラの動揺が息遣いで伝わる。
首筋にナイフを押し当てていた癖のあるロングヘアの女が、黒装束の男と共に明確な反応を示したのだ。
――いや、だが今の反応は――
「……探していた? それは、お爺様じゃなく?」
目を細めたココウェルに先を促され、一先ず続ける。
「もしこいつらがノジオス達を出し抜き、バジラノが国を盗る為だけに王族を探していたのなら、何よりまずは目の前の王女を狙う筈なんだ。既に王女はあの老騎士に捕まってたんだからな」
「……お前の話では、こいつらが城に入ったのはあの老騎士が城に入ったのとほぼ同じタイミング、という話だったな。アマセ」
「ああ。だから猶のこと、あの老騎士を闇討ちにでもして、まず王女を手元に置いてからでも王の捜索は遅くなかった筈。それこそもうリシディアを脱出しているかもしれない王を、刻一刻と戦況が変わる中で探すなんて大博打にも程がある。だがこいつらは何故かその博打を打ち――――結果、王も王女も得られないままここにいる」
「…………」
ペトラが怪訝な目を光らせながらこちらを見ている。
俺は眼前の黒装束へ視線を投げた。
「ここで一つ可能性が生まれる。こいつらが真に狙っていたのは王女でも王でもなく――――『王族だけが知る、或いは持つ何か』なんじゃないか、とな」
「わ、王族だけが――」
「そしてそれは恐らく――――どんな劣勢さえも一瞬で覆せる、文字通り『魔法のような何か』だ」
「――は。ハァ??」
ココウェルの声がいよいよ呆れの色を帯びる。
「……仲間が全滅しても、本隊が戻ってきても……勝算があったというのか、こいつらに。たった三人で?」
「ゼ、全然心当たりないけど、わたし――」
「……そうか。お前には心当たりが無いんだな――バジラノの懸念は正しかった訳だ」
「え……え? 何、ちょっとどういうこと? こいつらの懸念って?」
「こいつらがお前でなく王を狙うことに拘った最大の理由。きっとこいつらも考えてたんだろう……王族の出涸らしと呼ばれたお前を捕らえた所で、自分達が求めているものを、その在り処を全く知らない可能性を。だからギリギリまでお前を襲ってはこなかった」
「…………捕らえる価値も、なかったってこと?」
小さな屈辱の声。
仮面と髪で目を隠した二人のバジラノ人の目線は、今は少なくとも俺に向けられてはいないような気がした。
「……何よ。一体こいつらは何を狙ってたっていうの……!?」




