表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
121/1260

「意志の裏打ち」



「あの『音速』。どうやってやるんだ?」

「……え?」



 毒気どくけを抜かれたような顔のヴィエルナ。



「『音速』を使うお前をみた時、足の裏に魔力が集中しているのが解った。思うに、あれは英雄の鎧(ヘロス・ラスタング)のような、魔力を用いた技の一種なんじゃないのか? もしそうなら、俺にやり方を教えてくれ」

「音速……ああ。瞬転(ラピド)の、こと?」

「ラピドと言うのか? ああそうだ、お前が俺にやたら強いパンチを打ってきたときの高速移動術だよ。もしかして、あれはお前固有の魔法……つまり、魔術というやつなのか?」

「ち……違う。あれ、義勇兵コースの人なら、大体使える、移動術」

「基本の類かよ……読んだ本にはってなかったがな。まあいい。それを俺に教えろ。不躾ぶしつけに勝負を挑んでおいて負けたんだ、迷惑料めいわくりょうとしては妥当だとうな――――」



 ごぼ、と。



 ダムが決壊するように、俺は血を吐き落とした。



「!?」

「ぁ――な、ぁが、」



 吐血を認識すると共にやってくる虚脱感きょだつかん眩暈めまい、息切れ、動悸どうき。たまらず膝を折り、吐き出した血に吸い寄せられるようにして顔をうつむかせる。

 血は止まらない。

 再び口からき出した血が飛び、あるいは顔を伝い、床に血痕けっこんを広げていく。



 こうして確認する限り、外傷はない。となれば、原因は――――



「彼女の捕縛ほばくを解きなさい、ケイッッ!!」



 ――誰かの声とほぼ同時に、魔法陣への魔力を遮断しゃだんする。

 効力を失った魔法陣はみるみる光を減じ、何かが弾けるような高い音と共に、眼前の黒髪の少女が拘束こうそくから解放されるのが見えた。



 俺が見たのは、そこまで。



 痛みさえ感じる倦怠感けんたいかん、体の重みにくっし。

 俺の意識は、闇へと消えた。




◆    ◆




 ごめんな、愛依めい



〝どうしたの〟



 弱い兄ちゃんで。

 お前を守ってやることが出来なくて、ホントにごめん。



〝そんなことないよ〟



 そんなことあるよ。



 だから兄ちゃんな。この先の命はお前や母さん、父さんのために使うって決めたんだ。



〝……私は、お兄ちゃんに自分のために生きて欲しいな〟



 ありがとう、愛依。でもごめん、それは出来ないんだ。



 お前達さえ守れなかった兄ちゃんが、兄ちゃんだけが生きてく資格はないから。



〝……お兄ちゃん〟



 だからそこで、みんなと待っててくれ、愛依。



 きっと兄ちゃんが殺すから。



 なんにも悪くない愛依を、母さんを、父さんを、無慈悲に理不尽に不条理に殺した者達全てを無慈悲むじひに、理不尽りふじんに、不条理ふじょうりに、全部全部殺して殺して、殺すから。

 許さない。


   許すものか。


     絶対に許さん。



 殺してやる。



 貴様等が家族に与えた恐怖を、絶望を、無念を無力を苦渋を苦悶くもんを痛みを怒りを悲しみを呪いを、那由他なゆたばいして俺が与えてやる。

 貴様らという命を、生命の輪廻りんねから根こそぎ壊して消してやる。



 ――それまでは。

 地這ちはい泥をすすっても、例え世界を破壊しようとも――生きびてやる。



 死んでなるものか。



 こんなところで、死んでたまるか――――!!!!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ