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「地下牢の戦い――②」

 これではリリスティアとの連携は――――いや。どの道、今は(・・)耐えるしか方法は無い……!



「――ハァッ!!」



 脇差わきざし程度の短さの氷剣を錬成れんせい、黒装束に打ちかかる。

 敵は俺の得物以上に短いたった一本のサバイバルナイフで、悠々とそれに応氷剣が折れた。



「!?ッぐ、ぁ゛アアッッ……!」



 ――避けきれなかったナイフが俺の頬骨ほおぼねけずり裂く。

 耳元をかすめるは聞き慣れない高い音。

 それは距離を取った黒装束の手にある――――黄緑色に発光しながら刃を高速振動させるナイフ。



高周波こうしゅうはブレードまで実現できんのかこのトンデモ世界……!」

『――――』



 一閃。

背にしていた石壁が、頭上でナイフにあっさり斬り裂かれる。

低姿勢でび逃れ、黒装束へ向け凍の舞踏(ペクエシス)

狭い通路であることが幸いし、敵の接近を遅延させることに成功する。



 ……目一杯退()がり、周囲をよく確認する。

 この場所までは電波欺瞞紙(チャフ)の煙も届いていない。



 急げ。



魔弾の砲手(バレット)――ッ」



 魔法名を口にし、充実した魔力供給の下で琥珀こはくの弾丸を石壁へと撃ちまくる。

 この窮地きゅうちを脱するための血路けつろを開く為に――



 ――瞬転(ラピド)してきたらしい黒装束の高周波ナイフが兵装の盾(アルメス・クード)さえぎられ、耳障りな高い音をたてる。



 壁に穴が開く。

 破壊された障壁が散る。

 壁に穴をあけることにとらわれ過ぎていた俺は辛くもナイフを避けたが、その拍子にバランスを崩し――――体をあっさり絡め取られ、後ろ手に地面へと組み伏せられた。



『本当によわよわ。こりゃこの国の将来は無かったねぇ』

「ああ――悔しいが俺はお前に勝てない、」

『おしま~い』

俺は(・・)な」

『!――――――――――!!――っ っ、』



 ――仮面が飛ぶ(・・・・・)



 長くウェーブのかかった茶髪が、ちゅうにばらける。



 崩れた壁の奥から伸びた水の一閃(・・・・)が、黒装束の仮面をえぐり取り、破壊した。



 離れよろけた黒装束へ肉薄にくはく、両手を奴の胸へ当て壁際へ押しやり、



「――凍の舞踏(ペクエシス)



壁に貼り付けるようにして、奴を凍結とうけつしばり付けた。



『ッ――!!! っ、っ!!』

「――最高のタイミングだよ、ボルテール兵士長。危うく殺されるとこだった」

「……っぷぁッッ、」



 勢いよく広がった水道管からの水たまりから、水精化すいせいかしていたペトラ・ボルテールが現れる。

 少々予定より遅れはしたが……事前に(・・・)話した通り、奇襲と拘束には無事成功した。



「私をこんな汚い水道管にギリギリまで閉じ込めやがったばちだよ。いくら水と仲がいいからといって……もう少しで溺死できしするところだ」

「その上死体は細い水道管の中で圧壊あっかい、ミンチになって発見される、か……確かに考えたくないな」

上水道じょうすいどうでなかったらお前も同じかんにブチ込んでやるところだったよ」

「軽口が叩けるくらいには余力を残して勝てたんだ。よしとしてくれ」

「……ああ。精霊化せいれいかし水道管伝いでお前らを追う、お前と敵の魔波を目印に不意打ちをしかける――秒で話した作戦にしては最上の結果だ」



 水にぬれた銀髪を耳にかけながら、ペトラのもう片方の手がうつむいた黒装束――――否、長いウェーブヘアの女のあごつかみ上げる。



「さてと。まさか女だったとはな、黒装束」


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