表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1203/1260

「彼の見ていなかった1分」



 不可視の弾丸に仮面を不意撃たれた黒装束がひるむ。

 すかさず盾の砲手(エスクドバレット)を連弾し、立て直す間を与えることなく――――氷剣ひょうけんでその体を袈裟懸けさがけに斬り裂いた。



「!」



 かたい手応え。黒装束が下がる。

 その装束にはわずかな裂傷がつき――その下に、ホログラムのような光をちらつかせる鎧が目に入った。

 見かけによらず防御も固い。



 顔は仮面、体は鎧と装束。



その重装備で、あれだけ動けるか。

 つくづくとんでもない手練れだ。

 斬るでなく突くべきだったか。アヤメの時のように――


     |       《殺してしまうかもしれないのに?》



「ッッ!!? づ、ァ゛……!!?」

『?』



 ――久しく感じなかった気がする目を切るような電撃が、脳を走る。

 畜生ちくしょう、こんな時に「痛みの呪い」の活性化が――!!



 矢が目の前。



「ッッッ!!!!?」



 紙一重かみひとえ避ける。いや、当たった。

 こめかみと耳に激痛。そして――――側頭に喰らった蹴りで体が吹き飛ぶ。

大して天井が高くもない廊下の入口で、体が完全に浮くほどの勢いでもって壁に激突。

呪いも吹き飛ぶほどの衝撃と揺れに立っていられなくなる。



「う、ァ――!!」



ひざ瓦礫がれきと共に崩れ落ち、四つんいの姿勢になる。

れた頭、耳から血が床にしたたる。

追撃の代わりに俺に見舞われた第三撃は――大量の水だった。



「――!?」



突然の冷たさにぎょっとし、慌てて自ら逃れる。

見れば壁の中に配管されていた水道管が衝撃で破壊され、怒涛どとうの勢いで俺のいた場所へと水が降り注いでいた。

黒装束は――もう廊下の曲がり角にさえ見当たらない。



「クソッ……!!」

「毒づいてる暇があるなら追えアマセッ!」


 

 後ろからペトラの声。

 勝手には消えてくれない自然の水で濡れた髪から水気を切りながら、黒装束の――ココウェルらの消えた廊下の先を見据える。



 無事でいろよ、リリスティア――



「――ペトラ」




◆    ◆




 砂色の廊下を駆ける。

 長く続く廊下は階下へ階下へと繋がっており、降りるほどに暗く重い空気をまとい始める。理由はすぐにわかった。



「……牢獄か」



 牢番ろうばんの番所のような部屋を通り過ぎ、更に階下へ。

 物々しい鉄格子が見え始めた、その最初の曲がり角の手前で――ようやく魔波の乱れを感知した。

 この奥で、リリスティアがあいつと――!!



「リリ――――ッ!!?」



 驚きは、曲がった瞬間に迫ってきた出会い頭の背中へのもの。

 慌てて地を飛び退すさり、対峙たいじするに十分な距離を取る。



 それがリリスティアやココウェルだったなら抱き止めていた。

 そうしなかったのは、感じた魔波が――



「……お前、」

「っ……」



 ――吹き飛ばされて俺の方向へと飛んできたのは、黒装束だったからだ。

 仮面の裏で咳込せきこみながら、黒装束は油断なく自分をはさみ撃つ俺とリリスティア、そしてココウェルを見た。



「ケイ!」

「アマセ君!」

「お前達、無事だ――」



 ――眼前の光景に、無事だったか、と言いかけた口が止まる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ