「黒装束のリーダー」
「がっ――ッ!!?」
鞭のように振り下ろされた手刀がペトラの首根を打ち、ふらついたペトラを前に黒装束が左拳を――
『温い』
――握ったと思ったときには、既に「発射」されていた。
肘から出た青白い光――あれが話に聞いた「ジェット」とかいうやつか?――によって急加速した拳がモロにペトラの頬をブチ抜き、顔から飛んで壁を砕き割る。
「ってか……しゃべった……!?」
『ヌルいヌルーい。こんな奴らにこの国は……宝の持ち腐れ』
機械化された声で喋りながら、黒装束が矢をあらぬ方向へ放つ。
その先には――
「!……?」
――黒装束を水泡に捕らえている、シャノリア?
「ッ!」
直前まで眼前の敵にばかり気を払っていたらしいシャノリアが矢を避け、放たれた数発のうちいくつかが水泡を貫き――黒装束は解放される。
その黒装束は水を飛ばしながら瞬転、水滴を落としながらもう一人の黒装束の傍らで床に片膝を着く。
『無理禁物。何度も言わすな』
『ですが……』
わずかに聞こえる二人の黒の声。
プレジアを襲った黒装束共はいやに均一に整えられた集団だと感じたが……こいつらにはやけに個性を感じる。
そして何より――
「実力にバラつきがあるな。あいつら」
「うん。それにたぶん、あいつが――」
『までもほぼ殺ったね。あの美女、今度はしっかり足止めしといて』
『……はい』
『他全部私やる』
『!!』
強い方の黒装束が腰元から白く鍔も柄もない剣を抜き、こちらへ迫る。
やはりこんな半端な隠れ方をしても無駄か。
「ココウェルッ! さっきの――」
「ああ、あるあるッ! 隠れ場所あるッ!」
「そこへ逃げろッ!――リリスティア、頼む!」
「分かった!――アマセ君、気を付け――」
急加速。
「ッッ!!!」
慌てて物理障壁で防ぎ――片方の開いた手から射出された矢を魔法障壁で防御、障壁が割れると同時に二振りの所有属性武器を錬成して合わせる――
「――」
「ッ! 、」
――暇など与えてくれない。
黒装束が背後に魔弾の砲手を展開し、自分諸共乱れ撃つ。
爆風で動きを狂わされないよう、同じく魔弾の砲手で弾丸を相殺する。
明らかに魔術的な刻印が付けられた仮面の性能か、魔弾の砲手の爆風の中でも的確にこちらの急所めがけて片手剣を見舞ってくる。
だがそれは――俺の分野だ。
「凍の舞踏」
『ッ!』
俺の足元から奔った凍結が黒装束の足元に及び、滑った奴がバランスを崩す。
瞬転で詰め、下がる隙を与えない程の連撃を加える。
怯んだ奴を更に――
青い光。
「っ……!? う、ッ……!」
頭の上をジェットパンチが抜ける。
何とか避けきったその一瞬で、矢継ぎ早に次のジェットパンチ、ジェットキックが襲い来る。
先も見た蛇のような動き。そしてまるでバーナーを小刻みに点火するような音をたてながら、敵はジェットを小出しして急加速の変則攻撃を繰り出し続けてくる。
絡み付くような独特の動きはまるで中国拳法の一種。
加えて急所を的確に狙ってくる、体術というより暗殺術とでも言うべき連撃。
バジラノお抱えの暗殺者と言ったところか、気が付けばあっという間に防戦一方になってしまっている。
だが――――十五秒だ。
「盾の砲手」
『ッ!?』
 




