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「父子の明暗」



 緑色の光を放った治癒魔石ちゆませきは、即座にマトヴェイの体をいやし始めた。



『!!!』

「お、親父……!? これは、」

(主に股間こかんだけ緑色に光ってる……。。)

「ぬあああぁぁあああッッッ!!!」



 ノジオスが砂をまとう。

 中級魔法土竜の行軍(スオロプス)がマリスタらに襲い掛かり、



 大きな口を開けて叫んでいたノジオスの口内に展開された火弾の砲手(ファイアバレット)が爆発、ノジオスの反撃は一瞬で打ち砕かれた。



「が…………ぱ…………!!!!」

「諦めなさいな。あなた達フェイルゼインはもう、」

「おしまいなんだよ」

「ッ……!! く、くそ、ども……!!」

「!」



 騒動にまぎれ、マリスタも気付かぬうちに逃げ去ろうとしていたマトヴェイの行く手をアティラスが回り込んでさえぎる。



 身をていしてマトヴェイを守ろうとする父親の身を、一顧いっこだにすることもなく。



「……あの、バカむすこッ……!」

「……救われんな。救いようも無い」



 ガイツがノジオスを、そしてマトヴェイを見て言う。

 マリスタが身をよじり、サイファスの腕から逃れるうちに、マトヴェイはアティラスに剣を突き付けられ、瓦礫がれききわへと追い詰められていた。



「おっっ……おおお俺を殺すとこのクーデターの真の目的が解らなくなるぞッ!! 他の奴が誰か喋ると思ってるのか!?」

「お前は洗いざらい吐くというのか?」

「きききっ、貴様等の態度次第だろうがアタマの悪い騎士め立場をわわっ、わきまえろ!! わかったらその剣を下ろせ早くッ!!」

「……立場をわきまえるのはお前の方だ。こちらとしては、首謀者しゅぼうしゃが生きているだけで十分んだぞ?」

「しゅしゅしゅ首謀者は俺だ間違えてんじゃねぇボケッッ!!……――ッッの役立たずクソオヤジがッ!! 時間稼いでやってんだろ早く俺を助けに来ねぇかこのボンクラッ!! あんだけ息巻いといてオチがこれかよッ!! つくづくツキのねぇ野郎だ落ちに落ちて最後は息子までてめーの破滅に巻き込みやがってッ! クソクソクソクソクソッッ!!!」

「あのクズ野郎……!!!」

「ま、マリスタっ。あまり力むな、体悪くするぞっ」

「……保身と言い逃れしかしなさそうですわね。あの獣畜生けものちくしょうは」

「同感だな。行動を見ていれば――どちらの言葉を信用すべきかも一目でわかる」



 ガイツが目線を下げる。

 そこには禿げた頭を地にこすり付け、彼らの足元で土下座をするノジオス・フェイルゼインの姿。



「……頼む。俺はどんな風に扱ってくれても構わん。だから息子だけは、息子だけはッ……!!」

「……そんなに頭を下げるくらいなら、どうして初めからこんなことしたの?」



 苦々しい顔で、マリスタがノジオスに歩み寄る。

 ノジオスは頭を上げない。



「あなた達フェイルゼイン家は、うちの家に次ぐ大商人だったんでしょ? こんな大バカなことしないで、まじめに……まじめに、働いてれば……!」

「……マリスタ?」

「…………」



 ガイツがマリスタを見て目を細める。

 マリスタ自身にも理解できない涙が、鼻を伝って流れ落ちる。


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