「親子並び」
通信を切ったガイツにアティラスが歩み寄る。
ガイツがせき込み、吐いた血をズボンで拭った。
「……休息が必要だな、あんたには」
「休んではいられない。商業区にいる者達――特に放送局の職員の無事を確認せねば」
「じゃあまずやるべきは人員――生き残りを探すことだ。そして兵士長は休む。頭が不在でも機能するのがアルクスなんだろう?」
「……従おう」
「ああ。……さて、後は魔術師長にも休息をとってもらって――」
瓦礫の一角が崩れる音。
『ッ!!』
静けさを取り戻した更地の商業区にはふさわしくない音に、意識のある者全員が警戒を強める。
しかし、崩れた瓦礫など付近には視認できず――代わりにガイツとアティラスの視界から消えたのは――否現れたのは、
「……あいつは、」
「誰だ?」
「うぁ……オヤジ……?」
崩れ、魔波となって散り消えた大きな岩の中から現れた、金髪浅黒の優男。
少し遠くにいたサイファスとイミアは、その顔をよく知っていた。
「マトヴェイ・フェイルゼイン……!?」
「……そう。あんな獣畜生でも守りたい息子というわけですわね。父親にとっては」
苦々しい顔をしながら、遠くで泥水に浮かぶノジオスを見てイミア。
サイファスの腕の中で熱が身動ぎする。
「! マリスタっ、お前気が付いたのか、」
「さい、ふぁす……」
「もういいんだ、寝てろ。後は俺達で――」
「ちが、う、」
「え?」
「つれ、てって。あいつらの……ところ」
「? あいつらって……フェイルゼインの奴らの所にか?」
「まだ……おわって、ないの」
「!?」
ばしゃり、と水音が響き。
その音にガイツらが反応した次の瞬間には――ノジオス・フェイルゼインは泥沼から飛び出し、転げるようにしてマトヴェイの前に片膝立った。
『…………』
「お、おやじ……負けたのかよ、」
「逃げろマト、ヴェイッ……逃げんかっ」
ノジオスの口から血が、水が滴る。
その目は油断なく、近くにいるガイツとアティラスを見つめている。
サイファスとマリスタを置き、イミアがノジオスとマトヴェイに歩み寄っていく。
「存外生き汚いですわね。ここより後に退く場所はないなどと吹いておきながら」
「なんだ、と、てめ、メス……」
「立てバカ息子ッッ!! ご――ほっ、立って――逃げろッ!!」
「往生際の悪い――!」
「だいじょうぶ、です。ヴィエルナちゃんのお兄さん」
サイファスに抱きかかえられて近付くマリスタが言う。
「だ、大丈夫って……ああ、そうか。君らが奴を……その、ここまで追い詰めたのか」
「はい……きっと動けません。その……玉とか、潰したので」
「タっっ??!?」
「……魔術師でなければ致命傷だな。合理的だ」
「ですわね。少し見直しましたわよ小娘」
「マリスタ……お前なんて恐ろしいことを……」
「だ、だって……ごほ。許せなかったんだ、私。あいつを……あの親子を」
「…………――――ッ!」
『!!』
全員が身構えるが、遅い。
ノジオスが懐に手を入れ――手にしたものを投げる。




