「マリスタ・アルテアス」
『!!!』
雲が揺らいで見えるほどの水弾の群れがマリスタの背後天を覆い、水しぶきを飛ばしながら回転し始める。
地上で小雨を浴びるアティラスとガイツはただただ目を見開いた。
「なんて子だ……まだあれだけの魔力を……!!?」
「……血のなせる技か……だが、」
「?」
「ずわァ~~~~~~ッハハハハハハハハ!!! 馬鹿が……この最高級最高純度最強硬度の防護魔法符『グランギュル』がッッ、いくら数が多かろうと魔弾の砲手程度で破れるワケなかろうがァァァ!!!」
「ッッ……!!」
〝ああ、王女――――伏せないと当たりますよ?〟
〝ダメえぇぇぇェェッッッ!!!!!!!!!!!!!〟
マリスタが奥歯を噛む。
想起されるのは、無数に展開した全力の魔力を注ぎ込んだ流弾の砲手で敵の片腕しか潰しきれずすべて叩き落とされ、あげく背骨をへし折られ敗北した悪夢。
たとえ魔弾の砲手を万発撃とうと、「本物」の力の前には手も足も出ない。
〝勝たなきゃいけないんだッッ!!!!〟
それが許される時は、とうに終わった。
〝だからお前はそういう器じゃねぇって言ってんだろうが、カァァ~ス〟
〝お前達何の力も無い生徒達に――――一体何をどう期待して信じろというんだ〟
「……伝えなきゃいけない。示さなきゃいけないんだ。あなたに、みんなに――」
〝何度でも言おう、お前は――――力と権利を生まれながらにして与えられた選ばれし存在なんだ〟
「私達が、いえ私が――――信じるに足る器なんだってことをッ!!!」
「ッ……!!?」
――――流弾の砲手が、発光する。
マリスタが目と口をかっ開き口から、鼻から血の筋を流しながら――――水の弾幕に、稲妻の如き水色の光を奔らせる。
「な……!!?」
「なんだ、一体何を……!?」
「小娘っ、あなたまさか――」
「私は――――あなたを倒すッ!!! そのためならッ――」
〝貴方、神にでもなるつもりですか?〟
「〝神なんか、超えてやる〟ッッッ!!!!!!」
「――――――――――ばっっっっっっ 、 、」
ノジオスがそれを認識し――目玉をひん剥く。
それは海神の三叉槍。
マリスタがこの戦いの中で百に届こうという数を撃ち放った、水属性上級魔法。
防護魔法符で簡単に受け止め打ち払うことができる、水の三叉槍
の、弾幕。
「ばッッッ――ばばばばばばばばばぁ、ぁ、 、?、、!?!?!?!」
浮かんでいる。
水の初級魔法、流弾の砲手の弾幕が一つ残らず形を変え――――――今、渦巻く激流を従えた無数の三叉の槍となって、その矛先をノジオスに、向けて、いる――――――
「ばかがっ、、、、っ、――ッッばかが馬鹿がバカがばかがばかがァァァァッッッ!!!! どうしてっっ、そん――――そんッッなことが人間にできるワケがッッ、」
「あああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁッッッッ――――!!!!」
マリスタの魔力回路が吠える。
最大放出限界量を超える魔力の行使に体中が内出血し、体中に青あざをにじませながら――――目からさえ出血しながら、アルテアスは裂帛を発した口を引き結び、片手をあげながらノジオス・フェイルゼインを見下ろす。
「……知ってる?」
「……!?」
「私は知ってる。ディオデラはもっともっと、星をつかむくらいに大きな機神だった――だから『英戦の魔女』、タタリタじゃないとどうにもできなかった」
「な……? なにを、」
「そんなポンコツなんか、本物のディオデラの足元にも及ばないッ! だからあんたの相手も――――――英戦の魔女の足元にも及ばないっ、私で十分なのよッッ!!!」
「~~~~マ・リ・ス・タっっ、、、」
「ブチ溺れろ――――ノジオス・フェイルゼイン」
「アァァーーーーーールテアァァァァ~~~~~~~スッッッ!!!!」
「海神の三叉槍の砲手ォォォォ――――――!!!!!!!」
手が下ろされ。
魔法符などあっさり食い破り――――百を超す上級魔法の三叉が魚群の如き美しさで、機神の首筋へ吸い込まれた。
「ぶがアアああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああアアアああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?!?!??!??!?」




