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「ド根性大戦――⑦」



小さな小さな火と風の玉を、イミアは掲げた両手の中で混ぜ合わせ――静かに手を下ろす。



 ――魔波が。

 風と火の狂乱が。

 完全詠唱かんぜんえいしょうの最上級魔法二つが。



 世界を獄炎ごくえんに変えながら、「ディオデラ」に吹きすさんだ。



「――――っっずわあああああああああああああ!!?!??!??!?」



 半狂乱となったノジオスがディオデラから身を乗り出し、駆動魔石くどうませきの前に魔法障壁まほうしょうへきを展開する。



「ぎゃあうッつ……!!??」

「ッ――」

「すごい……!!」



 マリスタらの視界は――否フェイルゼイン商館しょうかん跡地あとち周辺は吸い込む空気さえ焼き尽くす炎に食われ、体は吹き荒れ体の自由を奪おうとする嵐に耐えることで精一杯だ。



「ああああああああああああああああああッッッ――――――!!!!」



 イミアの叫び。



 高音で旋回する灼熱しゃくねつ大嵐たいらんは余すところなく小男の矮小わいしょうな障壁へ注がれ――――今その表面を溶かしながら、急速に亀裂きれつを生じさせ始めた。



「!!!!!」

「もう少し――もう少しです、イミアさんッッ!!!」

「ふふ……その鋼鉄の体、骨も残さず焼き尽くして差し上げますわ――――!!!」

「うぅぅうぅぅうううぅぅうぅうぅうぅぁぁあああぁあぁぁああぁあぁ!!!!!」



 シルクハットの下で野心に満ちた瞳を輝かせるしわがれたノジオスの声がうねる炎にかきけされる。

 渦巻く炎はいよいよ勢いを増し、全身を業火にさらす機神はその体を赤光しゃっこうさせ、発火し始める。

 蛇のように身をくねらせひびから障壁内に侵入した火勢かせいがノジオスの上を向いた鼻下びかのひげを焼き、小さな煙を上げながら左右非対称な形にがしていく。

 亀裂は大きく、大きく、大きく、そして――



「やめろおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッッッ!!!」

「終わりですわ――――テロリストッッ!!」



――ついに障壁が、破られる。



 煉獄れんごくの炎の先兵せんぺいが、青き光に弾かれる(・・・・・・・・)



『ッッ!!!!!?』

「ハァァァァアアァァァァアアアア~~~~~~~~~ッッ!!!!!」



 狂喜きょうきの叫びはノジオスのもの。

 その目と鼻の先、障壁の破れた内側で青き光を放つのは――――一枚の防護魔法符ぼうごまほうふ



マトヴェイ(エロガッパ)が使ってたのと同じ――親父おやじも持ってたっての!?」

「くっ……防護、魔法符……!!!」



 歯を砕けるほどに噛みしめるイミア。

 障壁をはるかにしのぐ守りはもはや防ぐでなく弾くようにして次々と迫る火と風を魔素と滅し、光は拡大しているようにさえ見える。



 イミアの口から、一筋の血が漏れた。



「ッ……! イミアさん、魔力切れ――」


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