「ド根性大戦――⑥」
「兵士ちょ――」
「――――!」
「あああァァッッ!!!」
精霊の壁を展開したアティラスが砂嵐のなかへ突っ込み、外套の内に辛うじて残っていた柄に魔力を注力、再び鉄槌を手にして「ディオデラ」の手を強撃――――機神自身の放った岩群の王棺の勢いも相まって騎士はガイツの救出に成功、砂を脱して退却した。
「ずぬふはははははァァッッ!!」
「〝天地裂き空捩り〟――――ッ!」
双肩の魔砲から岩群の王棺を放出しながら、「ディオデラ」が詠唱中のイミアのいる方を向く。
イミアは機敏な動きでこれを回避し、
「馬~~~~鹿が引っ掛かりおってェェエ!!!」
「ッ!! しま――」
岩群の王棺を放ちながら瞬転した「ディオデラ」のロケットパンチに体勢を崩され――もう片腕の鉄拳に、その身をさらす。
「砕け散れェ王宮魔術師長ォッ!!!!」
「――――」
「でりゃあああああッッ!!!」
衝撃。
マリスタがイミアの前に展開した兵装の盾が、鉄拳を明後日の方向へ弾き飛ばした。
「ぬぐがァッッ!!! こむすめ、」
「イミアさん詠唱をッ!!」
「――――〝第七界を紡ぎ渡る、ソラかみをなげ〟!!!」
「わうっ!?」
イミアがマリスタの着たローブのフードをつかみ、空を蹴って天へと飛翔する。
腕を戻しながら上を向いた「ディオデラ」の上級魔法を魔法障壁で防ぐマリスタを盾に、「ディオデラ」の頭上へ躍り出たイミアが――その手にドリルの如き高摩擦音をたてる圧縮された空気を握り込む。
呪文は今、完全詠唱された。
「――やりますわよ。さあ、最後のお膳立てをくださいませ、」
「ずわっはははははァ!! 俺ッ様がそうやすやすと貴様に駆動魔石をさらすとでも――」
「兵士長殿」
「――?」
「風神の斬喝」
――落ちた地面で。
主人の合図に、「ディオデラ」へ向けられた魔装大剣パルベルツが羽根を戦慄かせ――――上級魔法を奔らせる。
「うぉォ――ァアッッ!!?」
もはや上級魔法と呼べる最低限の威力しか持たない、しかし予想だにしない方向からの風が「ディオデラ」の脚部を真後ろから襲い――その巨体を地に引き倒す。
と同時に。
「二重詠唱、」
王宮魔術師長は、火と風の最上級魔法を、解放する。
「四天滅却の火明――――六嵐穿つ小夜凪」




