表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1184/1260

「ド根性大戦――③」

「この戦いの目的は無理に敵を倒すことではなく、戦争中の本隊が帰ってくるまで王族を守ることです。より王都に近く、また敵の戦意をくじきやすい敵の首領を叩くのは当然の判断ですよ、ケネディ先生。……それに森の方からは、もう随分ずいぶん音を聞いていないような気がします」

「爆発とやらの爆音も、もう結構前だもんな……生きてろよ、ザードチップの野郎……」

「……我々もこうしていられません。一刻も早く居住区の安全を確保し、各地へ応援に向かいましょう。特に――あの何やら巨大な式召喚しきしょうかんのようなものに乗っていた敵の首領。アレが持つ今の勢いは……危険です」




◆    ◆




「――〝名無き鬼娘おにむすめの前に出ろ。いだかれたそのただ遺灰いはいもっ黄泉よみを飲め〟」

「やめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろ!!!!!」



 ――機神躍動きしんやくどう



 もはや機械仕掛けであることを微塵みじんも感じさせないほどのバネで暴れまわるノジオス・フェイルゼイン操る人型魔装機甲ひとがたまそうきこうブリゼクタ愛機あいき・「ディオデラ」が、地を駆けながら詠唱えいしょうを続ける王宮おうきゅう魔術師長まじゅつしちょうイミア・ルエリケを両足で踏み潰す。



 それを正面から受け止め跳ね返したのは――アルクス兵士長ガイツ・バルトビアとリシディア国軍騎士アティラス・キース。



『ずああああああッッ!!!!』

「ぬ、がォぐ――――!!!」



 裂帛れっぱくを以て、二人の戦士が「ディオデラ」の全体重を受け止めわずかに空へと打ち上げる。

 そこに上空から、



海神の三叉槍ヴァダレイ・リュアクスゥゥゥッ!!」



 たった一人残った義勇兵ぎゆうへい――――マリスタ・アルテアスが上級魔法を撃ち込む。



「バ~~~~~~カガキがァァァァァ!!!」

「ッ!?」



 打ち出した三叉さんさの水槍が弾ける。



 上級魔法を打ち抜いた「ディオデラ」両腕のロケットパンチがマリスタに迫り――少女はそれを、



水神の御心(リオクル・ディバン)ッ!!」



 空中で水泡すいほうのクッションを錬成れんせい、弾力でパンチを受け止めると同時に足場とし、瞬転(ラピド)で難を逃れた。



「そんなスライムで俺ッ様がとまるかァァァァ!!!」

「んきゃうっ!!」



 水風船のように弾ける水泡。



 マリスタは空中を乱回転しながらも体勢を立て直し、更に水泡を生み出して瞬転(ラピド)、「ディオデラ」の補足から脱していく。



「チョロチョロチョロチョロ小バエが――ぬおうっっ!!?」

「だああああッッ!」



 魔石による障壁しょうへきに守られた「ディオデラ」中央のノジオスにアティラスの鉄槌てっついが命中――一瞬視界を奪われる。



閃風(アネモス)ッッ、」

「ぐぅうア――――」

「――――(パーダ)ァッッ!!!」



 吹き飛ぶ「ディオデラ」。

 既に魔力切れのガイツが放った五十数撃目の風の刃が「ディオデラ」の首筋に命中――――ノジオスが自前で展開した機神の駆動魔石くどうませきを守る魔法障壁だけで耐え切れず、再び体を宙に浮かせてうつぶせに倒れ伏す。



「〝戦慄わななかすけた金切かなきりをこの燃域ねんいきに満たせ。はかみのみのうたなり〟」

『!!!』



 ――イミアの手に太陽が錬成れんせいされる。



 不定形の溶岩ようがん然とした魔力のかたまり。しかしイミアはその高エネルギー体を放たずゆっくりと手を閉じ始め――――やがて溶岩は回転しながら圧縮され、ごく小さな球体となってイミアの黒手袋をした手へと飲み込まれた。



 そして、もう一重ひとえの詠唱が始まる。



「――〝背のなぎを聴け。風食かざくいの座をうば福音ふくいんえ。鳥群ちょうぐん天墜てんおとされし地底伏すついばみの鎖神子くさりみこ、空(あお)ぐ双眼のいましめにき沈む嵐の神の昇天をあおげ〟」

「!!! くそ、くそ……二重詠唱にじゅうえいしょうだったか……!!」



(――――埒があかん。ラチがあかんッッ!!!!)



 手詰まりに歯をきしませるノジオスだったが――その苦渋くじゅうはすぐに狂喜きょうきへと変わる。



「ずわふひひひひひ……そうだァ。何故最初からこれを思いつかなんだ……!」



 地を握りしめる「ディオデラ」。

 頭によぎるのは、アルクス兵士長の片腕が再起不能になった一幕ひとまく



(魔力切れか? ともかく――あと二秒で障壁しょうへきが解ける!!!)



 片手で大剣を構え、「ディオデラ」の首元に飛び込んでいくガイツ。

 しかしその直後機神は起き上がり、



「――――ッ兵士長ッ、」



 手に握った床の一部だった沢山の瓦礫がれきを、



「奴は居住区を狙っているッッ!!!」

「ッッ!!」

「最初からこうすればよかったのだァ――――――!!!!」



 居住区へ、投擲とうてき



 家々を粉砕するに十分過ぎる威力を持った岩石群がんせきぐんが、豪速ごうそくをもって居住区へと射出された。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ