「説教」
そしてナイセストの背後には――倒れているヴィエルナら。
「……」
ナイセストが障壁を展開、竜巻く荷物の突風が正面衝突し方々に散らばる。
照明や窓が割れ、無事に積まれていた別の木箱が崩れ――槍に貫かれていた倉庫を支える石柱の一つが、風のひと押しで完全に崩壊した。
倉庫が揺れる。
『!!』
「くそっ、あのガキ――」
(人質を攻撃、同時に倉庫を壊して救出時間に制限をかけたか。どいつもこいつも子供の身で妙に戦い馴れている…………)
「――アンダンプの『望まれぬ子供達』がテロの片棒を担ぐか」
「uaaaaaaaッッ!!!」
黒煙の槍が一息にナイセストごと障壁を貫く。
しかし障壁内にナイセストの姿はなく、
「ッ!?」
「同情を買うにしては、」
自らの影から転移したナイセストが、倒れたトゥトゥの影から這い出る。
「なっ……グッ、」
「aaaaaaッッ!!」
ナイセストがトゥトゥの首をつかみ、黒煙の鎧へ投げる。
一瞬硬直した鎧が左手を広げ、トゥトゥを抱きかかえつつ右手に槍を振りかざすが――
「気の引き方が一線を越え過ぎたな」
――硬直の隙を、「最強が」見逃すはずもない。
「ナイ、セスト――っ、」
ロハザーの必死の声も、空しく。
ナイセストの所有属性武器はトゥトゥの胸を――そして兜と鎧の隙間、カシュネの喉元を――貫いた。
「――っ、ぅ、」
「――――ぐ、ぷ」
トゥトゥが、鎧が煙と消えたカシュネが重なるようにして倒れる。
床に血だまりが、ゆっくりと広がっていく。
「……さて。説教も済んだ。無駄に子供を苦しませるのは好きじゃない」
「こ……ふゥ……っ、」
「あね、き……くそっ、こんな、」
「せめて痛みは一瞬で済むようにしてやる。来世では幸福に生まれろ」
ナイセストが、何の感慨も宿さぬ目で――――所有属性武器を構え、姉妹に歩み寄る。
「こんな、所でッ……!!、」
「ナイセストッ!」
「おい聞こえてんだろナイセストッ! 大貴族はガキまで殺すってのかよ! くそ、この拘束……ァあっ!」
「ティアルバー君、やめなさい! 彼らはまだ――」
「リシディアに仇なす全てを除く。それが『ティアルバー』の役割――」
――ナイセストの行く手を遮る者が現れる。
それは足と呼吸を震わせ泣きながら嗚咽を漏らす、三姉妹の末っ子。
「……おねがい、やめて……わたしたちを、ころさないで――」
「謝って済むのは子どもの世界だけだ。愚か者」




