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「ド根性大戦――②」

「おんどりゃああああああああああッッ!!!」



 ――――「ディオデラ」の腕が。



 マリスタのポニーテールを、ぞぞりとかすめた。



「ッ!……アルテアス、」

「ぶわっっっはいまかすった髪にかすっっった!??!?! あっぶなあっぶな――――じゃなくてっ、兵士長! だいじょぶですかっ」

「……ああ、大事ない。助かった」

「ガイツッ!!」

『!』

岩群の王棺(ルペスカ・ルカラス)ゥゥゥゥ!!!」

「きゃっ!?」



 ガイツがマリスタの前に大剣を突き刺し、精霊の壁(フェクテス・クード)を展開。

 直後「ディオデラ」の土属性上級魔法が、轟音ごうおんをたてて二人を包んだ障壁しょうへきの上を滑り始めた。



「障壁を代わるんだアルテアスさんッ!! 兵士長はもう魔力切れだッ!!」

「!」



 アティラスの叫びと同時にガイツの口を流れる血を認め、マリスタは彼より前に手を突き出し、ガイツの展開した障壁の外側に障壁を作り出す。

 何か言いたげにマリスタを見ていたガイツだったが、やがて顔をうつむかせ障壁を解いた。

 ガイツのごつい坊主頭を大粒の汗が伝う。



「――すまん」

「ホントですよ」

「!」

「やりすぎると減点されるあの実技試験は。『やれることだけやって逃げろ』とか言ってたあのアルクス代表あいさつは何だったんすか、ほんとっ」

「……そうだな」

「でもカッコいいっす」

「……?」



 肩で息をしながら。



 まっすぐに敵を見つめながら――それでもマリスタは目を輝かせている。



〝どこまでもあらがえ〟



「兵士長もティアルバー君もめちゃくちゃカッコよくて、」



〝この国を救わんと欲する『国民』なら――――それにふさわしき肉体と魂を示し続けろ〟



「私も――――私もそうなりたいって強く思うから、」



〝「国を救う」とはそういうことだ〟



「もうあの子を絶対泣かせたくないって思うから!!!」



 砂が晴れる。



 「ディオデラ」が拳を振りかぶり、迫る。



「ずああああああああああッッッ!!!!」

「こいポンコツロボ(・・・・・・)――――私達は勝つッ、」



 マリスタが手に、無詠唱むえいしょう海神の三叉槍ヴァダレイ・リュアクスを握り込み――――拳に正面から、打ちかかる。



「勝たなきゃいけないんだッッ!!!!」




◆    ◆




 大地が裂けるような音と、同時に。



 少女ミエルの目の前の窓ガラスが、突き破られる。



『ッッ!!!?』



 ミエルが硬直する。

 トゥトゥがくわえていたタバコを落とす。

 倉庫でくだを巻いていた悪漢あっかん達が慌てて得物を手に取る。



 飛び込んできた人物を、二人の少女はよく知っていて――



〝もう覚えられてる(・・・・・・)ぜ。オメーらの顔は〟



 ――何一つ、知らなかった。



〝あいつは大貴族の責務を確実に(・・・・・・・・・・)果たす(・・・)



「……しろくろあたまの、」

「――ティアルバー、だと――ッ!!?」

「――粛清しゅくせいの時間だ。畜生ちくしょう共」


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