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「ティアルバー――③」

「……すべて、除くですって……!?」



〝何をしていたんですか?〟


〝魔波感知を〟



「……できるというのですか、そんなことが。たった一人で」

「――我らはティアルバー。かしこくも宗主リシディア王家に臣従を許していただいた、名誉ある最初の大貴族(・・・・・・)

呵々(かか)……我ら一族は誓ったのです。宗主リシディアへの永遠の忠誠、そしてその為にこそ――――『最強』足らねばならぬ、と」

「…………!!」



 「最強」。



 そんな歯が浮くような寒い言葉を、大真面目に――――そして何よりの説得力をもって言い放つ二代のティアルバー。



「……一つだけ命令です、ナイセスト・ティアルバー……必ずわたしの下に戻りなさい。決して死ぬことのないよう――あなたの力はきっと、これから先のリシディアにも必要です」

「……それは」



 ――大逆たいぎゃくの罪人に、一国の王女が投げかけていい言葉ではない。

 そう思うも、ナイセストは話さず――ディルスはただ無言で小さく笑った。



「――必ず戻ってまいります。父上。それまでどうか殿下でんかを」

「この命に代えても。さあ行け最高傑作さいこうけっさくよ。今こそ我らティアルバーの役目を果たす時だ」

「……行ってまいります。殿下」

「!」



 言うなり、ナイセストが自身の影に沈むようにして消える。

 闇属性の転移魔法により、彼は音もなく城から消えた。


「……ディルス・ティアルバー」

「なんなりと」

「『王壁おうへき』の魔石の状況を確かめに行きます。ついてきなさい」

「……よろしいので? 王壁は――」

「戦場を一人で移動する方がよほど恐ろしい。解っていますか――もうわたしにはあなた達親子しかいないのです」

呵々(かか)。さてそれはいかがでしょうかな」

「え……?」

「我が感知が正しければ。もうじき――集団でここへやってくる者達が現れます」

「!」



 言葉と同時に、城門が勢いよく開かれる。



 駆けこんできたのはペトラ、シャノリア、リリスティア、そして――




◆    ◆




「あの馬鹿め……あれほど動くなと言いつけておいたのにっ……!」




◆    ◆




「――ココウェルッ!」

「――ケイっっ!」

「待てアマセッ! 不用意に近付くなッ!!」

「!――?」



 万感に相好そうごうを崩すココウェルに駆け寄ろうとしたケイがペトラの声に、そして眼前のディルス・ティアルバーに足を止める。

 ディルスは呵々と笑いながら小さく顔を振り、その切れ長の目で駆けこんできた増援部隊を見た。



彼奴等きゃつらの警戒ももっともでしょう、殿下」

「ディルス・ティアルバーだと――どういうことだッ! 何故貴様が表に出て殿下と共にいるッ!」

「早まるのではありませんっ、ペトラ・ボルテール! ――わたしの口から説明します」


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