「限界達のわななき」
(ッ…………、? あれ、衝撃が来ない――)
「何を呆けてるんですの。小娘」
「ッ――」
――はれる砂煙。
マリスタに繰り出された「ディオデラ」の拳は、イミア・ルエリケの障壁とガイツ・バルトビアの大剣によって止められていた。
「諦めるにはまだ早いですわよ」
「――魔術師長! あの、もう体は」
「……我ながら、情けない姿を晒してしまいましたわ。本当に」
「ボルテール兵士長。城の中継は見ていたか」
破れたローブを口元に持ち、ガイツがかなめの御声を開く。
『ああ、見ていた。引き続き――そちらに増援は必要か?』
「……要らない。半壊した城を手勢でできるだけ建て直せ。そして」
『そっちに送るつもりだった救護班は二分して一方を王都中の住民避難に充てた。悪く思うな』
「当然の判断だ。それと――以後の軍の統括はお前に任す」
『……了解。あと、らしくない弱気はやめろ気味が悪い』
「……」
『だが働き詰めだ。この仕事が終わったら少し休暇をもらうぞ。クソ真面目な同僚に遠慮して、妹との家族中を修復する時間ももらえてないんだよ』
「……いいだろう」
「随分と余裕ですのね、笑っているなんて。状況がお解りかしら、アルクス兵士長殿は?」
「共に戦っていただけるのですね。魔術師長殿」
「今更でしょう……それにあなたはともかく、」
「……え?」
イミアが肩越しにマリスタを見る。
「――背中を預けられますわ、小娘。あの獣畜生から、私を守り続けてくれたあなた達になら」
「――……ド派手ローブの下に、あんなバックリ背中あいた変態ドレス着といて何言ってんだか!」
「誰が変態ドレスですかワンピースですッ! というか裸ローブのド変態に言われたくありませんわよっ」
「変態上等ッ。変な奴同士――やっと肩を並べて戦えるってコトでしょ!」
「どんなリクツですのっ」
「……その変態には俺も入ってるんじゃあるまいな」
「負けられませんから」
マリスタが拳を手の平に打ち付ける。
目の前には、第二撃を振りかぶる機神の姿。
「ティアルバー君の言う通り。手も足も動く限り――――私はココウェルを守るマリスタ・アルテアスで在り続けるッ!!」
「……ええ!」
「――弱点は割れている。後は倒すぞ。この、クーデターの首謀者を」
「……無駄な足掻きッ……! 超えられるものなら超えてみよ、」
潤滑の足りない関節部を軋ませ。
機神は、音を泣らした。
「俺ッ様とて気持ちは同じ――次の国にすべてを賭けておるのだからッ!!」




