「もっと、」
「…………私の話。聞こえて、ないの?」
ああ、なんてこった。
このまま鍛錬を続ければ、俺は――こんな力をいつか必ず、手に入れることが出来るのか。
〝――将来のこと、まじめに考えてるの?〟
――今、俺はやっと、歩けている。
琥珀色の弾丸を創り出す。
「!!!」
ヴィエルナの足が回避に動く。
彼女の真横、倒れた俺の真上に発生させた弾丸が爆ぜ――
「――っ!? 痛ったい」
――足を動かした先にあった氷の床で滑り、ヴィエルナは盛大に転倒した。
「さっきの凍の舞踏の――――!」
「遅い」
寝返りを打つ要領でヴィエルナを視界に収め、魔弾の砲手を数発放つ。
ヴィエルナが尻餅をついた姿勢で後転し、両手で体を宙に跳ね上げて弾丸を躱していく。
俺はようやく立ち上がることが出来た。
――まだ、完全には平衡感覚が戻っていない。英雄の鎧は、こうした体の感覚も研ぎ澄ませてくれているのだろうか。
まだまだ検証の余地ありだな。
ヴィエルナの足が地を捉える。
さて、来い。もう一度あの「音速」を見せてみろ。
少女のローブの裾が撓んだ。
両手を突き出す。
「兵装の盾――――」
呟き、物理障壁を展開。
体中を目にするようにして、「音速」を使おうとしているヴィエルナの、あらゆる動きに集中する。
足の裏、床と接している部分で高密度に圧縮された魔力が弾け、筋肉の動きと連動しているのが感じ取れた。
先と同じく、ヴィエルナが一瞬で俺の前に現れ、繰り出される拳が障壁に正面衝突して、
「ぐッ――!」
「っ……、」
障壁が罅割れる。
「……凍の舞踏!」
割れて消えゆく障壁の向こうへ小さな吹雪を放つ。
しかし即座に後退したヴィエルナによってついでに試みた追撃は失敗に終わる。再び生成される氷の柱。
「やっぱりカラクリがあったんだな。さっきの音速」
「見破っても、無駄。使えないなら追いつけない――!」
柱を挟んで真正面に立っていたヴィエルナが移動して再度俺の正面に姿を現した――今、なぜ移動した?――。また奴の体が沈む。
――まさか。




