「回剣VSナイセスト――①」
――黒き魔力が、白き光を食らう。
ナイセスト・ティアルバーが、復活する。
「もう何をする必要もございません、殿下。ただそこに座して――どうか今しばらく耐え忍んでください。ここより後ろには、欠片の危害も加えさせません」
「はっ――カッコつけちまってよォ中二病くゥん!」「ナメまくったこと言ってんじゃねーぞ!」「一人でこの人数相手で、カケラノキガイモクワエサセマセンはイキりすぎだぜェ!」
「救いようのない馬鹿共が、」
悪漢達を、
「『ティアルバー』が現大貴族の中でも別格であることさえ知らぬのか」
圧し潰さんばかりの魔波が、襲う。
『ッッ!!!?!?』
城を貫く空間が歪み視界が捻じれるほどの魔波。
フェゲンのように構えなかった百にものぼろうかという悪漢達は残らず重圧にあてられ、目玉を小刻みに上下させ、口の端から泡を吹いて失禁、血管を体中で内出血させながら失神する。
ナイセストの背後にいたココウェルにはわずかな魔波しか感じられず――倒れた悪漢らにただ茫然とする。
「あと一人」
静かな顔で、最強が老騎士を見た。
「――カ、カカ……これほどか……!」
フェゲンの足元に、悪漢が落とした記録石が転がる。
ナイセストは一歩踏み出し――その両手に双剣の所有属性武器を錬成する。
『なんだ……何なんだフェゲンオイッ!! どうなった、応答せんかフェゲンッッ!!』
「カカ、カカ……――ッカカカカカカカカカ! 願っても無い……願っても無いことだ! 我が仇敵の一角をここで――――」
長剣が閃き。
「討ち果たせるというのだからッ!」
黒紅の鎌剣がそれを受け止められず破壊された。
「!」
「ハァかかりおったかかりおったァァァァ!!!」
ナイセストが退がる。
所有属性武器が破壊され長剣が肩口に届くまでの間に瞬転したナイセストの体は紙一重袈裟斬られず、身に着けていたボロボロのTシャツだけが斬り裂かれ落ちる。
「カカカ! 惜しいのう、上半真っ二つかと思うたが――」
ナイセストの精悍な肉体と――――肩口から袈裟懸けに残された、深い裂傷の痕が露出した。
「――カカカカ! おっと先客がいたかね! カカカカカ……! 最強を謳うティアルバーの嫡男に傷痕とは痛恨よな!」
(所有属性武器が破壊された……)
「ククカカカ……一体どんな強者につけられた勲章だ?」
「(…成程)…今まで戦った、」
ナイセストが――防御の構えを取っていたフェゲンの肩口を飛び越える。
「最も強い男に」
フェゲンが背後に振るった一撃を――――ナイセストが拾い上げた悪漢のナイフ二本で受け止める。
「カカカ――そんな不慣れな武器でいつまでもつのかね?」
「……仕方ない」
「勝負は時の運よな――――そうれ。いくら不得手とて我が魔剣は容赦せぬぞ!」
フェゲンがナイセストの腹を蹴り飛ばす。
ナイセストは勢いに後退するだけで怯んだ素振りさえ見せず、両手のナイフを逆手に構え直す。
火花が散った。




