「ああ、俺は」
真横に立つヴィエルナの足元で、ただ臓器を抱えるようにして倒れ込むしかできない俺。
内臓が痺れるような痛みがいつまでも体に残り続け、立ち上がることを決して許さない。
こいつの姿は、確かに俺の視界の中でブレた。かと思えば次の瞬間には、恐らく打撃――打撃だ。あいつは今、拳を握り締めて腕を折っている――を腹部に叩き込まれていた。
単純な速さか?
馬鹿な。俺の英雄の鎧はまだ切れてはいない。
未だ離されているとはいえ、身体能力で言えば奴とまともに戦える程度の舞台には立てている筈だ。
〝英雄の鎧の強化レベル、術者の基礎身体能力に大きく影響受ける、から〟
――そういうことなのか?
待ってくれ。とすれば俺とこいつとの基礎身体能力の間には、一体どれだけの差があるっていうんだ。
「あなたがどうして、義勇兵コースに。入って。どうしてそんなに熱心に、勉強とか、修行とか、してるか。知らないけど……きっと、あなたは強くなりたい。んだ、よね?」
…………ハハ。
お笑いだな。俺は今、華奢な体つきの少女による、たった一発で地に伏している。
この少女がそんな力を――実力を持っているなど……一体誰が、想像し得るだろう?
「でも、焦ってもきっと、体を壊すだけ。だよ? あなたのこと、心配でたまらない人、きっといるんだから……もっと、自分のこととか。……友達のこと、とか。考えてあげた方が。いいんじゃ、ないかなって思うのだけど、あなたはどう思う?」
少女を仰ぎ見る。
魔石による照明に照らされ、まるで後光を背負った聖女のように見える。
「あなたが、どんな人生を生きてたか。私、知らないけど。……友達と一緒に歩くの、きっと楽しいと思う。だから、焦らないで。ちゃんと、みんなのことも、」
だが、その見え方は俺にとって、紛れもない真実だ。
これまでも、数多くの義勇兵候補生の模擬戦闘を、この場で見てきたが……彼女の強さは、その中でも群を抜いている。
この目でしっかりと見た限りでは、最も俺の理想に近い、強さ。
「だから、もっとみんなのこと、見てあげて。……マリスタなんか、すっごく。あなたのこと、心配してるん、だから。知ってた?…………」
あんな風に魔弾の砲手を避ける姿を見せられて。
華麗な動きで激烈に攻撃されて。
「……私をずっと、見つめてる、けど。どうしたの?」
憧れない訳が無い。
羨まない訳が無い。
欲しない訳がない。
そして俺は、ああ、




