表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
115/1260

「ああ、俺は」



 真横に立つヴィエルナの足元で、ただ臓器ぞうきを抱えるようにして倒れ込むしかできない俺。

 内臓ないぞうしびれるような痛みがいつまでも体に残り続け、立ち上がることを決して許さない。

 こいつの姿は、確かに俺の視界の中でブレた。かと思えば次の瞬間には、恐らく打撃――打撃だ。あいつは今、拳を握り締めて腕を折っている――を腹部に叩き込まれていた。

 単純な速さ(スピード)か?

 馬鹿な。俺の英雄の鎧(ヘロス・ラスタング)はまだ切れてはいない。

 いまだ離されているとはいえ、身体能力で言えば奴とまともに戦える程度の舞台には立てているはずだ。



英雄の鎧(ヘロス・ラスタング)の強化レベル、術者の基礎きそ身体能力に大きく影響受ける、から〟



 ――そういうことなのか?

 待ってくれ。とすれば俺とこいつとの基礎身体能力の間には、一体どれだけの差があるっていうんだ。



「あなたがどうして、義勇兵コースに。入って。どうしてそんなに熱心に、勉強とか、修行とか、してるか。知らないけど……きっと、あなたは強くなりたい。んだ、よね?」



 …………ハハ。



 お笑いだな。俺は今、華奢きゃしゃな体つきの少女による、たった一発で地に伏している。

 この少女がそんな力を――実力を持っているなど……一体誰が、想像しるだろう?



「でも、あせってもきっと、体を壊すだけ。だよ? あなたのこと、心配でたまらない人、きっといるんだから……もっと、自分のこととか。……友達のこと、とか。考えてあげた方が。いいんじゃ、ないかなって思うのだけど、あなたはどう思う?」



 少女をあおぎ見る。

 魔石による照明に照らされ、まるで後光を背負った聖女のように見える。



「あなたが、どんな人生を生きてたか。私、知らないけど。……友達と一緒に歩くの、きっと楽しいと思う。だから、あせらないで。ちゃんと、みんなのことも、」



 だが、その見え方は俺にとって、まぎれもない真実だ。

 これまでも、数多くの義勇兵ぎゆうへい候補生こうほせい模擬もぎ戦闘を、この場で見てきたが……彼女の強さは、その中でも群を抜いている。



 この目でしっかりと見た限りでは、最も俺の理想に近い、強さ。



「だから、もっとみんなのこと、見てあげて。……マリスタなんか、すっごく。あなたのこと、心配してるん、だから。知ってた?…………」



 あんな風に魔弾の砲手(バレット)を避ける姿を見せられて。

 華麗かれいな動きで激烈げきれつに攻撃されて。



「……私をずっと、見つめてる、けど。どうしたの?」



 あこがれない訳が無い。

 うらやまない訳が無い。

 ほっしない訳がない。

 そして俺は、ああ、

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ