「破壊の光」
「かかかげかか。貴様のような小童に言っても詮無きことよ――返すぞ!」
「!」
「きゃっ――」
フェゲンがココウェルを投げる。
つんのめるようにしてフェゲンの前に飛んだココウェルにレヴェーネは転移の弾丸を放ち、魔法陣を出現させ、
ココウェルの後ろ髪から剣が突き出る。
「ッ!!」
「いぎぃいいいっっ!!」
肩をわずかに撫で斬られ悲鳴を上げるココウェル。
レヴェーネの背筋を悪寒が立ちのぼり彼はとっさに、
「お~~~~~ォおォ!!! 姫が消してしまう魔法陣を壊さねば!!!」
ココウェルを抱えて飛び退ったが間に合わず――フェゲンはココウェルを中心に展開された転移の弾丸の魔法陣と共に、ココウェルの背中を深々と斬り付けた。
「ァああああああああああッッッ!!!!!!」
「ココウェル殿下ッ!」
鮮血が散る。魔法陣が散る。
ぱっくり裂けたココウェルの背中から、とうとうと深紅の血が垂れ流れる。
「貴様ァァッッ……!」
「儂は賊ぞ? 仇を嬲るは当然であろうがむしろッ!! 姫の傷は悉く、こやつを姫と頂く貴様等の責任」
「ッ……このっ、」
「そら。荷物が増えたのォどうするッ!」
砂岩のタイルを蹴り、間髪入れずフェゲンが迫る。
レヴェーネは治癒魔法を瞬時にココウェルへ施し――手にした杖を再び槍へと変化させ、老騎士の長剣を受け止めた。
「ほォ。貴様白兵もいけるクチか!」
火花。剣光。
槍ごとレヴェーネを両断しようと風切り音を鳴らし迫る大振りを、魔術師は槍を棒きれのように振り回し一歩も引かずにいなし続ける。
「カカカ、できるできる!! よもや貴様のようなモヤシの優男にここまでの立ち回りが出来るとは!」
「勉強熱心な――妹を教えていたものでね!」
レヴェーネが一瞬の隙を突き、フェゲンの胸を蹴り飛ばす。
フェゲンはわずかに呻き後ずさった。
(やはり、下手な魔法術より白兵の方が勝機ありか。応援を呼んで王女の警護を――――)
――――おかしな魔波が吹き飛んできたのは、そのときだった。
『!!!?』
レヴェーネが、そしてフェゲンが止まる。
否――魔波の感知がそう上手くない者達でさえ体に不調を覚え、立ち止まる。
やがて迫りくる津波のように大きくなってきた音と共に、その正体を知る。いや見る。
魔波の、迫りくる音の正体。
それはあさっての方角から、城下をまっすぐ城へ向けやってくる巨大な巨大なエネルギーの塊だった。
「なん……だあれ、」「え?」
「――――ッッッ皆携転石で城内へ退避ッッ!!! 非戦闘員を守れえええェェッッ!!!!」
レヴェーネが弾けるように王女の下へ飛び、懐から取り出した魔法符で彼女一人分の結界を張る。
「ぐっっっ――――」
振り返ると同時に飛ぶ。
既に視界を埋め尽くすほどの距離に迫る、謎のエネルギー弾。
レヴェーネは、
「――ぉぉォォォオオオオオオオッッッ!!!!!!!!!」
その相貌に似つかわしくないほどの咆哮をあげ、白き光に飲み込まれた。




