「転移の弾丸」
剣戟と、魔光が――――乱れ飛ぶ。
「釣鐘」「鮫肌」「庵」が先行し、応じた王宮魔術師が次々と四方八方へ散り――――フェゲンとレヴェーネの周囲に人はいなくなる。
「あ、あの。フェゲンさん、破城槌は……」
「馬鹿ッ、今話しかけんなって」
「小男へ」
『はいっ!?』
「我らが頭へ連絡をしておけ。間もなく国家は転覆せり、とな」
「は――はいっ」
「させんさ。潰されてたまるか――お前達如き賊に、国一つ潰されて堪るものか!」
「潰れるわい。それだけこの国が弱り切っておることさえ理解できんか小童ッ!」
副王宮魔術師長、レヴェーネ・キースの背後に――渦巻く闇のような弾丸が多数装填される。
「転移の弾丸」
「!?」
弾丸を飛び散らせるレヴェーネ。
己に飛来した弾丸を長剣で切り裂くフェゲン。
他の数発が悪漢、破城槌にそれぞれ着弾し――――対象を中心に魔法陣が展開された。
「うっ――お、なんだこれっ、」
「フェゲンさんッ、破城槌に――」
「ほほう!」
喜声と共に、フェゲンが長剣を大きく振り――魔法陣を破壊。
「これで飛んできたワケか先程は、カカ――――転移魔法陣を出現させる弾丸とは恐れ入る」
「ああ、そして」
「!」
そうしている内に、フェゲンの背後にレヴェーネが肉薄。
光と共に現れた杖を手に、
「これで終わりだ」
杖の先に光の刃を生み出し――フェゲンを貫いた。
はずの刃が横滑る。
「!?」
「おォこわいこわい」
フェゲンが嗤う。
レヴェーネの槍は火花を上げながらもフェゲンの白き鎧を貫かず逸れる。
横薙ぎに大振られ迫るフェゲンの長剣を前にレヴェーネは――――消えた。
「! ほォっ」
先に散らした転移の弾丸が展開した魔法陣へ音もなく転移したレヴェーネが放った更なる一発の転移弾がフェゲンを捉え陣を展開し、
フェゲンはなんでもないように、その陣を長剣で破壊した。
「――なるほど。対魔力性能を付与された鎧に、破魔の剣……いや、『魔剣』か?」
「カカカ。そんな大層なものではない。巷にあふれる模造品の一つよ。力は見ての通りだがな。楽しいのう、能力の探り合いなど久方ぶりだ」
「抜かせ。破城槌を転移させられればこちらの勝ちだ」
「と、儂の注意をとんま姫から逸らそうとしているわけか」
「…………何故、お前ほどの頭脳を持つ者がこんな小火に手を貸す?」




