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「しかし だれも こなかった。」



「――負けない。わたしたちはけないッッ!!」



 砂塵さじんへ向け、敵へ向け言葉が口をく。



「たとえっ、たとえ私達がやられたとしてもっ……私達には仲間がいる! 今もここやお城を目指して進んでくれている仲間がいるッ!!」

「……願掛けか何かか? やたらやかましくなりおって」

「違う、事実よ! 私達は敗けてない負けない、これだけの戦火なんだもの――きっと誰かがすぐにも駆け付け――」

『おーいチビおっさん、聞こえてるー? おーい』

「!?」

「ん?」



 ノジオスが懐から角ばった記録石(ディーチェ)を取り出し、起動する。

 投射された画面に映ったのは、髪をてきとうな三つ編みに結った小さな女の子。



『うわ、周り茶色ちゃいろじゃん。何があったの?』

「き、貴様……なぜこの記録石(ディーチェ)を持っている、こいつは幹部連中にしか――――……『あの男』か」

『そ、『あの男』が『いらんからやる』ってさ。そんなことどうでもいいから確認したいんだけど。私達の報告、ちゃんと届いてんの?』

「報告?」

『……つかあんた……』



 ノジオスの声音に疲労の色を聞いて取った少女だったが、指摘する無駄を省いて続ける。



『あー届いてないのか。あながち嘘でも無かったってことね、あいつの言ってたことは……』

「大人ごっこはヨソでやっていろ小娘共ッ! 今忙しいのが――」

「馬鹿にすんなっつってんでしょチビ。『敵捕まえたら金出す』っつってたわよね、あんた――――お金、後でもらいに行くから用意してなさいよ」

「なに――――」



 画面をのぞき込んだノジオスが固まる。

 小声で上級魔法じょうきゅうまほう詠唱えいしょうし切ったマリスタが、狙い定めて打ち込もうと腕を上げたと同時に――彼はこれまでにない歓喜の笑い声をあげた。



「!?」

「ずふぅわははは、ははは、はーっっハハハハハハハァ!!!――おぉいアルテアスの小娘ェ!」

「何言ったって無駄よ海神の(ヴァダレイ)――」

「お前の仲間ァ。死にかけてるぞぉォォ!!」

三叉(リュア)っ、」



 ノジオスが拡大した映像に。



 血だまりの中で倒れるロハザーに、マリスタは動きを完全に止めた。



「――え? なに、それ」

「貴様の仲間をォ、俺ッ様の部下が完全撃破したってことだよォォォォ!!! 誰もお前ら等助けにこれなァァァいッ!!!」



 

 ロハザーから映像がずれ、捕らえられたヴィエルナ以下他のメンバーも映る。



 上級魔法が、少女の手の中でゆっくりと消滅していく。



「……そん、なの。ニセモノ、」

「だそうだぞ小娘ェ? その若造共がホントに敵なのか証明できるのかアァ?」

『は? なんだったら声聞かせてあげようか?』

『声といってもヒメイですけどね、あねさま』

『あん? んだよ姉貴、もう一つくれー内臓ないぞう潰すか?』

『だめ。臓器は高く売れるんだから』

「そうだよなァア~傷つけるわけにイカンよなァァアアア!!!」



 「獲物えもの」の話をする少女達。

 勝ち誇ったようなノジオスの声。



 何もしていないのに荒くなっていくマリスタの、呼吸。


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