「陽光の中、わたしは全裸に剥かれ命乞う」
状況を飲み込めないココウェルの前で、男はためらいもなく――――彼女の服を破り捨てた。
「――――ぁ、ぁ――――――ぁあああああああぁぁッッッ!!!!?」
「オイオイ、暴れるなって――俺達はこの国を立て直そうって言うエイユウなんだぜェ!? どうぞ疲れをいやしてくださいって股開くのが娼婦の仕事ってモンだろうが!! イヒィヘヘこりゃ上モノだ、両手と顔埋めてもまだこぼれちまいそうだァハハァッ!!」
「ちがうちがうちがうちがうっっ!!! わたし――そうわたしは王女だっ!! 王女ココウェル第二王女ココウェルミファリシディアだ見ろ見ろお願いだからわたしを見てッッ!! 見なさいってッッ!!!」
「馬鹿女がァ、もうちっとキョーヨウを身に付けやがれェ! オウジョサマってのはもっと高貴なドレス着てぴかっぴかしてる人のことさァ。おめーみてーな薄汚れた痴女とは格が違げぇんだよォォッ」
「……なに……言ってんだよ……わたしはァァッッッ!!」
「うるっせェなもう黙ってろッッ!!!」
腫れぼったい拳が、ココウェルの頬を無造作に打つ。
打つ。打つ。打つ打つ打つ打つ打つ打つ打つ打つ「痛い痛い痛い痛いいたいいたいいたいぃィィィッッッ!! やめ゜てめてやめてぇェェッッ!!!」
「ハァ、いいから後ろ向けオラ……今ブチこんでやるからよォぉォ……!! ンぁ~すっっげェ揉み心地だ漏れそうだハァ」
あごが瓦礫を擦り、かすれた血の跡を残す。
背後からはだけた胸を揉みしだかれながら、首筋に酒臭い息を浴びながら、獣のように下半身を擦り付けてくる悪漢に覆い被さられる。
(夢だ。これは)
見開かれたまま固まった両目から涙を流しながら、されるがままで動けないココウェル。
残っていた下半身のドレスも剥かれ――――臭気に満ちた男の顔が不快に下半身をまさぐる。
「っっっハぁアぁァあぁァぁぁ、うんめえええええええぇぇ」
(だって嘘だ。わたしが――このココウェルが娼婦と間違われて、挙句自ら名乗り出ても認知されないなんて。そんなこと、そんな、あるわけが)
「ああぁぁあぁあぁぁ、すっげぇぇぇェェエよこのオンナァァァァッッッ!! 上玉にも程があンだろォォォ!!! アァたまんねぇっへへェ、吹き出したくてたまんねェよォォォ!!」
大人しくなった下着一枚の少女を置き、男が自らのズボンを下ろしにかかる。
背後でカチャカチャと鳴るベルトの音に気付いたとき、不意に――――ココウェルの中に、先刻上げ損ねた悲鳴が戻ってくる。
そこからはもう、止まらなかった。
「――――ふざけろ……キモいキモいキモいキモいキモいッッッ!!!! クソがァァァァッッ!!!」
「あハヒ、へ、くそ、っここ、興奮しすぎてゆ、ゆびが……ひへっへ、オイなァ大丈夫だって、俺ァやさしいんだへへ、だから静かにしろよぉふっふ、」
「寄んなバケモンがァァッッ!!! わた、わたしは王女だぞッッ!!? こんな扱いされていいわけねェだろうがよぉぉッッ!!!?」
「あばれんなっておォい!!」
「寄んな触んな臭せェキメェェェェェェッッッ!!! やめろおおオォォグッ!!?」
「お前客を前にクセェだのキメェだのどういうことなんだよォォォッッ!!!」
「あ゛ッあ゛ッあ゛ッあ゛ッあ゛ッあ゛ッ、」
蹴られる。
蹴られる。
蹴られる。
蹴られる。
蹴られる。
蹴られる。
体も頭も大事なところも全部全部、全部、蹴られる。
踏み潰される。髪が千切れる。
血が流れる。
流れて、流れて、気が付いて――――――ココウェルは、媚びるように男の足にしがみついている自分をやっと認識した。
「(……え?)おねがい、ごめんなさい。ごめんなさい、あやまるから、シていいから。だからもう、けらないで……ころさないで……」
「はぁ~~~~~~、ハァ~~~~~~~、ハァ゛~~~~、そうだ……最初からそうしてりゃ気持ちよくしてやったんだ」
汗まみれになった太った体を震わせながら。
男がココウェルの目の前で、下半身を露わにする。
「……そうだ、アレやれ」
「……?」
「一度へへっへ、やらせてみたかったんだよォ。あれだよ――――俺にブチ込んでほしいって媚びてみろ。自分で開いて見せてみろ」
「……………………」
――――押しつぶされそうに胃が痛む。
せり上がってくる恐怖と胃液を必死に抑える。
もう左目が見えない。血も流しすぎている。
次叩かれれば死んでしまうかもしれない。
(こんな男の前で……そんな恥を晒せと?)
「急げよォ。見つかったらやべえんだよぉ」
(こんな男に……こんな形でわたしを捧げろと?)
「急げってェッッッ!!!!」
「ッッッ!!!」
声が出ない。
足が震える。
どうしようもない恐怖が、生きたいと望む命が、下着に手をかけさせる。
(……なんて無様を晒してるんだ、わたし)
王女である自分が。
瓦礫のど真ん中で。
市中のど真ん中で。
全裸になって男に犯されようとしている。
もう自分は王女などではないのではないか。
いや――そもそも最初から王女などではなかったのか。
だから 愛されず 捨てられる。
誰からも 弄ばれ
「――――――――、」
自分の中の何かが崩れていく音を聞きながら、少女はゆっくりと下着を下ろしていく。
男は下半身を最高潮に怒張させ、堪えきれず雄たけびと共に娼女に襲いかかる。
男が背後から真っ二つに両断されたのは、その時だった。
『――――――――――ぇ?』




