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「失言、またも」



 瓦礫のあちこちで声があがる。

 倒壊した商館の木片の下から商館内へと進んだガイツ班の面々が次々顔を出し始めた。



「ゼルテ……すまない。お前のケガも相当だろうに」

「だいじょうぶだ。ばりあ、してもらった。くびにいる、このこに」

「な、なんとか障壁しょうへきの時間もってよかった……それよりサイファスッ、ビージ君とイミアさんは!?」

「無事だ、今はとりあえず心配ないが――騎士きし、救護班はっ」

「さっき呼んだ、じきに来る! それまで――」

「『それまで』・・・・何かな? この神と戦うと?」



 小男が人間達を見下ろす。

 十メートルを超える巨体から発せられる圧に気圧けおされ、マリスタは思わず息をむ。



「何なのマジで……こんなキカイみたことも聞いたこともないっての……!」

「しかし合点はいった。それ(・・)で買収されたという訳か。侵略者共に」

「確信したのさ。軍事国家バジラノがついに完成させた人型魔装機甲ひとがたまそうきこう、『ブリゼクタ』。こんなものを量産(・・)できるような強国ならば――そんな技術力と我が力をもってすれば、凋落ちょうらくの一途を辿たど衰退国すいたいこくなぞ容易に落とせるわとな……!」

「その結果がコレか」

「コレさ。王城おうじょうは陥落寸前・貴様等反乱軍は半壊・この崩落で貴様等はマトヴェイさえも見失った。――あと一手。王女さえ――王女さえ我らの手に落ちればチェッッッックメイトよォ! ずわははははァ!!」

「――――え?」



 マリスタが我が耳を疑う。



「なんて言ったのあんた……ここにココウェルはい(・・・・・・・・・・)ない(・・)の!?」

「? なァにを言っとるかバカも大概たいがいにするがいい――俺ッ様は王女を捕まえたなどと一度も言った記憶はないが?」

「――……!」



 ――その通りだった。

 だがどこかでそう確信してしまっていた。

 行方不明になり、アルクスが班を分けて探しても見つからない王女ココウェル――瓦礫がれき下敷したじきになって死んだ可能性を無理矢理頭から締め出し、マリスタはいつの間にか彼女が敵に捕まったのだと思い込んでしまっていた。



 それが違うと言うのなら――今、ココウェルはどこで、何を。



「くっ……兵士長っ、私――うっっ!?」

「逃がすと思うか? 王女がその辺をほっつき歩いていると知って!!――――全員に伝えろォッ!!!」



 ノジオスが口元に魔法陣を出現させ、かなめの御声(ネベンス・ポート)を発動させる。



「王女は王都内のどこかに隠れているッッ!! あれを捕らえれば我らの勝利だァ! 全軍王女ココウェルを探せェッッ!!」

「――クソぉッッ!!」



 またも失敗を重ねた自分への怒りで立ち上がるマリスタ。

 しかしそれを迎えるのはあまりにも巨大な機械兵の拳。



 それでも止まらない。

 止まるわけにはいかない。



「ああああぁぁッッ――」

「死に時だ――その血を絶やせアルテアスッッ!!」



 衝撃。



轟音。



掘り返される地盤じばん



 魔力回路(ゼーレ)きしませながら、力任せに放とうとした海神の三叉槍ヴァダレイ・リュアクスはしかし――魔力を練り上げようと上げられたマリスタの腕を押さえ、かつ巨兵の拳を大剣で受け止めた(・・・・・・・・)ガイツ・バルトビアによって止められていた。



「へ――兵士長っ」

「ンンンンンッッッ……!!!」

「な――」


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