「神の一撃一挙動」
森が、焦土と化していく。
◆ ◆
フェイルゼイン商館が全壊する。
『ッ!?』
中庭にて手配者らを無事捕縛したアルクスらがぎょっとして振り返り、――視界の上へ消えた黒い影を追い、それがどうやら跳躍し中庭に着地しようとしている何かだと理解して――――手配者を抱える間もなく、慌てて中庭中央から飛び退いた。
地鳴り、地震――そして中庭の陥没、崩壊。
手配者をあっけなく踏み潰し、広大で豪奢な中庭をただひと着地で土砂に変えた存在は駆動音をうるさく響かせながら立ち上がり――ノジオス・フェイルゼインはその中央で、満足気に手を握っては開いて見せた。
機械兵は一瞬も遅れを見せずその動きを真似る。
それはその場の誰もが見たこともない、機械の巨人だった。
緑の竜種ゼルティウィドと同等の体躯を持つ機械兵はその中央部に障壁に守られたノジオス・フェイルゼインを乗せ、行き渡る魔力で装甲を青色に明滅させる。
頭部というべき箇所は存在せず、人体ならば本来頭部が生えるはずの場所から双肩が斜め上へ突き出すように伸び、同時に動脈のように太いいくつもの配線が四肢各部へ接続している。
「さぁァ……ゆくぞ。我が愛機『ディオデラ』よッ!」
「ディ――――何だと?」
「なんなんだこいつは……屋敷の中どうなってる!? 応答しろガイツッ!」
「屋敷の中ァ?……ずわははは。もう誰一人生き残ってなどおらんわァ!」
『!!』
「さあ受けろ反逆者共――神の鉄槌というやつをッッ!!」
巨兵が。
瞬転、する。
『な――――――――』
中庭が爆発。
土塊がすべて木っ端みじんに吹き飛び、余波で商館が更に崩壊する。
そしてアルクスの真横を通過したその拳は――――殴り砕かれた人間の血で、べっとり濡れていた。
「……サフィジー?」
「ずぅぅぅぅふふふふわはあはははははははははははッッッ!!!!! 一☆発ッッ!!アルクスが・一発で・肉塊ィィイイイイッッッ!!! あハァ――安心せい。神の裁きは平等に下されるぅッ!!!」
「……何なんだ何なんだよこれええェェッ!!!!」
神の拳が。
今度は土だけを砕く。
「――あ?」
前方につんのめりそうになった体をもう片方の手で支え、限りなく人間のように起き上がる機械兵。
ノジオスの障壁に探知された魔波の方角が示され、彼がそちらを向くと――そこには混乱で冷静な判断力を失ったアルクスを守り立つ、ボロボロな出で立ちのガイツ・バルトビアの姿があった。
「……ずわははァ。あの崩落の中を生き残ったかね」
「『残った』は間違いだな。誰も死んでいない」
「何?」




