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「クソ野郎へ、やっと」



 大理石の床が鋭い突起となって伸びる。

 しかし竜種の第二声が残らず切り飛ばし、魔術は魔素まそと砕け散る――



「またマヌケさらしてんぞォッ!」

「――ゼルテ(・・・)、」



 ――のをおとりに、竜種りゅうしゅゼルティウィドの足を大理石が拘束こうそく硬化こうかする。

 が、



「あの子を助ける。敵は岩と人形とあの赤いのだ」

「ヘイキだ。いけ。はやく!」

「ああ――行くぞッ!!」



 コンビはまるで意に介さず、やるべきことを見定める。



 風の竜がうなり、体が発光し――足の拘束()を力任せに打ち破る。



「ッ!? ち、くしょう――!!」



 巨大な爆竹が爆ぜるような音と共に、ゼルティウィドの口から放たれた風切かざきりの波動が床の大理石を残らずけずり飛ばす。

 瓦礫がれきのつぶての中、マトヴェイは防護魔法符を使いながら――赤銅の髑髏(痛みの呪い)手掌しゅしょうで操る。



「ぼさっとしてんなさっさと動けポンコツっ!!」

「!――? なんだ、あれ」

「ゼルテ?」

「いやだ――おれあれ、すごくいやだ!!」



 更に放たれた風の巨弾きょだんが――赤銅しゃくどう髑髏どくろを粉々の魔素にして吹き飛ばす。



「なッ!?全……――――トカゲがコラァッッ!!!」



 壁から天井から、大理石が伸びてゼルティウィドの身体に巻き付く。

 許容量を超える大質量の魔術に、部屋の均衡くずを崩された大広間が崩壊を始める。

 灯りが地に落ち、空間に影が差していく。



「おまえら――ジャマだぞっ!!」



 角を発光させたゼルティウィドが、その光を伝導でんどうさせながら両翼りょうよくを広げる。

 指骨しこつを伝う光を受け、時折虹色(にじいろ)に光る翼膜よくまくが空気をし――たった二度の羽ばたきで大理石を破壊する。



「ハァッ!! せえせえッッ!!」



 滞空し始めたゼルティウィドを追う数多の白き石。

 目前に迫った竜種のからだが、



 消える。

 そして、



「っ!? な――――とッ」



 次にマトヴェイがとらえたのは、反対側(・・・)の壁を足場にマトヴェイに狙いを定める緑竜りょくりゅうの姿。



びやがったのか羽根野郎のくせにッッ」

「オソいぞ。おまえッ!!」



 障壁をきしませ跳ぶ緑竜。

 滑空かっくう能力も合わさり、その速度に――――マトヴェイは追いつけない。



 褐色かっしょく金髪の少年は、死の恐怖を覚えた。



「う――うわああああああぁっっ!!!!」



 竜のつめが。



 物理障壁ぶつりしょうへきを砕き、マトヴェイを吹き飛ばす。



「ッアァ――――ッッ!!」



 巻物(スクロール)を抱え、兵装の盾(アルメス・クード)を破られた衝撃で後転しながら吹き飛ぶマトヴェイ。

 またも防護魔法符ぼうごまほうふを使い、視界が揺らぐ中なんとか起き上がり、



 迫っていたサイファスの渾身こんしんの拳で、ほおを思い切り打ち抜かれた。



「どゥ゛うァ――――ッ!!?」


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