「マリスタVSマトヴェイ――②」
大勢の泥人形が跳躍し、サイファスへ飛来する。
マリスタが急ぎ彼の下へ向かおうと地に足を踏み込んだとき、
二頭の白虎が空で交差し、飛び上がった泥人形をすべて真っ二つにした。
『!!』
ぼとぼとと地面に落ちる泥。
サイファスを守る様に地へと降り立ったのは、銀に光ってさえ見える白毛をたたえた二頭の召喚獣だった。
しかしマトヴェイは笑う。
「やるな、だが――さっきと比べて数が減ってるよな? やっぱりそこの凡俗はそれだけ負担のある術を準備してるってことだ。今は上手くいったろうが――野良猫二匹とメス一匹でこの数を相手にどこまでやれんのかな?」
泥人形が再生し。
せり上がった大理石が、マトヴェイの背後から迫っていたマリスタの所有属性武器を防いだ。
「くっ、そ……!」
「さあ。たった三匹で――せいぜい無様に踊ってみせろよ」
泥と大理石が。
赤銅の髑髏が、動き出す。
(アレに貫かれたら――――一発でも貫かれたら終わり!!!)
「ッ――海神の、」
跳躍、長距離を移動して赤銅へ足をつかまれる。
「ッ!?」
「ちなみに俺も少しは動けるけど。w」
足を引っ張るマトヴェイによって体が落ち――マトヴェイの魔術によって凹凸だらけになった大理石へ叩き付けられる。
しかし虹色に発光。
「お?」
「ッ痛――三叉槍ッッ!!」
水の激流が発射。
先程よりも荒く、およそ上級魔法としてまともに機能していない体たらくの、しかし大規模な魔法が赤銅を撃ち抜き、再び機能を停止する。
今度は大鎌がすべてチリと消えた。
「はは、ほんとお前――うおっ」
「ッッ――――っづあァだッ!」
足をつかまれたまま瞬転。
床に倒れたまま足をふんばって爆発させた魔力はマリスタに瓦礫の山を突っ切らせ――――地面に顔を削られながら、彼女はマトヴェイの手を脱し距離を取る。
切れた口元の血を拭い、体勢を立て直した。
端から迫る泥人形と床。
(前の障壁展開から――十五秒は経ったッ!)
精霊の壁を展開し、地を蹴るマリスタ。
大理石と泥人形が眼前に迫ったタイミングで瞬転、突撃の勢いで二つの土属性を突破し、
「馬鹿の一つ覚え。そうそう何度も同じ手通用するワケないだろうがッ!」
「ぐっ!?」
マトヴェイまであと数歩のところで、前方足元から大理石の柱が斜めに障壁へ激突、マリスタを吹き飛ばす。
「ちっ、この――」
「でノータリンのお前に解ってたか知らないがな。石は何も床だけじゃねぇ」
「え 、っわ!?」
真右から衝撃。
見れば壁から突き出でたもう一本の柱。
体勢を立て直そうと視界を広げたとき、
真左から伸びていた大理石の柱とに挟まれ、魔法障壁は粉々に砕け散った。
「ぎゃ、ぁ――――ッッ!!」




