表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
112/1260

「無手の弾丸」



 素早く手をかざす。

 顔程かおほどの大きさがある、数発の琥珀色こはくいろの弾丸が俺の背後に現れ――ヴィエルナ目掛めがけて真っ直ぐに飛んだ。



「! 魔弾の砲手(バレット)無詠むえい――」



 言い終わらないうちに、ヴィエルナは体をかがめて弾丸を避ける。

 床に着弾した弾丸が爆ぜ、魔力の残滓ざんしを残して煙のように消える。



 ――逃がさない。



 弾丸を絶やさず、ヴィエルナの姿を追う。だが――



「う、おっ……!」



 避ける。かわす。飛ぶ。走る。



 ――物静かそうな女が、どうしてホットパンツなんて軽装けいそうをしていたのか、ようやく解ってきた気がする。



 決して少なくない弾丸のつぶての中をり抜けるようにして俺に迫ったヴィエルナが、姿勢を低くして拳を繰り出してくる。受け止めようと伸ばした手をが突如とつじょ開かれた拳によってつかまれ、引っ張られる。



「ぐッ……あがッ!?」



 迫るヴィエルナの顔をとらえた時には、もう片方の拳によって腹部への一撃をもらっていた。

 引っ張られた体と突き出された拳――とても一発の拳とは思えない衝撃を受けた体は、魔法による身体強化をもってしてもわずかに折れ曲がり――俺を引っ張っていた手の感触が消えたのを知覚した直後、その手による掌底しょうていが俺のあごを打ち抜いた。



 身体機能を理解した合理的な格闘技。

 もう疑いようもない。こいつは――――武闘家(ぶとうか)なのだ。



「ッ!!」

「――――」



 揺らぐ視界の中で放った拳をあっさりと避けられ、その腕を掴まれる。

 再度視界が反転、一本背負いの要領で投げられて宙を飛び、背中に壁の衝撃――――次いで放たれたヴィエルナのりが、吸い込まれるように俺の鳩尾みぞおちとらえた。

 空気のかたまりが口から飛び出す――――のを感じた瞬間には腹部をす足は引っ込み、代わりに横腹をもう一方の足で蹴り飛ばされ――――コンクリートの床に叩き付けられた。



「がハッ――くそっ」



 追撃の予感だけを頼りに、後ろへと跳ぶ。

 幸い壁際ではなく、俺は忘れていた呼吸と索敵さくてきを再開、ヴィエルナの姿を認識する。追撃はしてこなかったようで、ヴィエルナは壁際で何やらポケットから黒い手袋を取り出し、身に着けているところだった。



 見たところ、メリケンサックというわけではないようだが……ここは異世界だ、何が飛び出すか分かったものではない。近付くのはした方が賢明だろう。

 接近戦にがないことは身に染みて理解した。



 なら――魔法はどうだ?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ