表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1108/1260

「王宮魔術師長――①」

 巨大な大理石のへびが、大きな音ををたててその首を落とした。



「…………これもかよ」

「馬鹿の一つ覚え。一つしかできないのは何も出来ないより悪いと言いますわよ」



 涼しそうな顔でそう言うのは、息巻いたマリスタがマトヴェイにとびかかろうとした横から巨大な風の刃を放った王宮おうきゅう魔術師長まじゅつしちょうイミア・ルエリケ。

 魔女を思わせるとんがり帽子の下から冷酷にも見える目をのぞかせ、彼女は続ける。



「まあ、お前の戯言ざれごと大概たいがいで聞ききたところでしたし。さっさと終わりにさせてもらいますわね、獣畜生けものちくしょう

「ちょ……魔術師長、あいつは私が――」

「大口叩いていましたけど、少し状況が見えていないのではなくて? 今は国を失うかどうかの瀬戸際でしてよ、お嬢さん」

「う……そうでした」

「では四人で仕留めましょう、先陣は失礼しますわよ。どうやらあの獣畜生けものちくしょう近接型きんせつがたでなく、遠距離型えんきょりがたの魔術師のようですし。砲台ほうだいとしての性能ならわたくしがこの中で一番でしょう」

「ハァ……相性ってのはここまで露骨ろこつなものか。せっかくの土魔法があっさりやられちまう――まあ他ならぬ俺の所有属性(エトス)だ。割れてて当然か」

「――自意識過剰じいしきかじょうもそこまでいくと滑稽こっけいですわね」

「……イチイチかんに障る言い回しだなメス。性格悪いって言われるだろ、お前」

「私の所有属性(エトス)。風じゃありませんわよ」

「――あ?」

「え?」



 マトヴェイとマリスタが反応する。

 何でもない風にイミアが続ける。



「土には風、だから使ったまでのこと。お前のような獣畜生のことなんて、私が知るワケがないでしょうに」

所有属性(エトス)じゃない属性は所有属性(エトス)に比べて数倍の訓練が必要になる。無詠唱むえいしょうでこの威力いりょくだ、あの風の刃見りゃそれが所有属性(エトス)なことくらい一発でわかるんだよ。意味分かんねぇとこで強がってんなよメス、俺に屈辱を与えたいのは分かったからさw」

「ああそうでした、」



魔波に揺れる帽子の下で。



 魔術師が、不敵に笑う。



獣に言葉は通じないん(・・・・・・・・・・)でしたわ(・・・・)



 イミアの指先からマトヴェイに飛ぶ、小さな小さな火の玉。

 結構な速度で迫った火の粉のごとき攻撃をマトヴェイは嘲笑わらい、



「そんなもんで――――っっっ、」



 直後、込められた魔波まはに気付き詠唱に移る。



堅き守人(シュタインヴァント)!!」



 詠唱破棄えいしょうはきにより、先の無詠唱とは比べ物にならない速さでマトヴェイの眼前に錬成れんせいされた石壁いしかべに火の粉がぶつかり、



「よくできました」



 石壁全てを食らい尽く(・・・・・・・・・・)()爆炎となってマトヴェイを包み波動のように伸び、彼の背後の石階段まで延焼えんしょうする。

 爆風で焼け千切れた赤い絨毯じゅうたんがイミアの眼前を舞った。



「ありゃ神火の群舞(フォルゲイツァ)、だよな? 無詠唱であの威力かよ……!?」

「ね、ねえサイファス。無詠唱って魔法の威力いりょく下がっちゃうの?」

呪文(ロゴス)を省略する分、多少はあらが出るからな。でもあの神火の群舞(フォルゲイツァ)はまるで横向きの火柱みたいで――あんなに充実してる中級魔法ちゅうきゅうまほうは初めて見た」

「……すご……って!?」



 視線を戻したマリスタが見たもの。

 それは燃え盛る炎がいまだ消えぬ中、次の魔法をその手に錬成するイミアの姿。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ