「新たなる刺客」
「……半信半疑だったけどよ、」
「おめーら気ィつけろッッ」
ガイツに負けぬたくましい体を持つ義勇兵、ガイツ・バルトビアの肉体は、分厚い筋肉と英雄の鎧で文字通り、鋼のように得物を通さない。
「そいつも剣刺さんねぇぞぉぉぉぉッッ!!」
「マジなんだな。『プレジアで訓練詰みゃあ、そこらの兵士程度じゃ相手にもならなくなる』ってのはッ!」
『いいいいいい!!?』
肘打ちの要領で腕を薙ぎ、悪漢二人を弾き飛ばす。
サイファスの召喚獣をかいくぐり、両腕を横に伸ばして庭を駆け巡るだけで――――その鋼の腕になぎ倒され、そのまま立ち上がれない悪漢多数。
ガイツ班全て、このような実力の持ち主。
「雑魚ばかり」と見立てたイミアの言葉通り、この者達だけでは庭を突破されるのは時間の問題であることを――――ノジオスとマトヴェイも十分確信していた。
「親父。モノは相談なんだけどさ」
「そうだ奴らもあの三人も出せッ! 急げッ!!」
「親父」
「ダメだァ!! 状っ況をよく考えろマトヴェイっ、いくらお前の頼みでも――」
「その奴らやあの三人が突破された場合で構わない。戦いには興味がないからさ。だからその時――マリスタ・アルテアスがまだ生きていたら、しつけは俺に任せてくれよ」
「勝手にせいっ!」
「熱上げてんなー。そんなにこの国の王になりたいのかよ? 親父」
「――、」
ノジオスが一瞬、マトヴェイを見て静止する。
その目の意図を解せないマトヴェイが片眉を上げたときには、既に父の視線は他を向いていた。
「念には念をだ。アレも用意しろ」
「アレですか!? しかしアレはまだ完全に――」
「口答えするなァ! 商売の鉄則は念には・念を・保険をだァ!! いいからさっさと準備しろッ、その為に増設した地下倉庫だろうがッ!」
「ははぁっ」
「……まあいいけど。楽しみだね」
マトヴェイは考えを打ち切り、屋敷の奥へ向かうノジオスに続いた。
◆ ◆
大岩の召喚獣に蹂躙され濃い土のにおいに満たされだした庭に、大火が迸る。
『!!』
ガイツ班が下がる。
一人のアルクスが走り出て、詠唱と共に――ガイツ班全てを覆うほどの横広さを持つ魔法障壁を展開、迫り来た大火を左右の植木へと流し延焼させていく。
「あっつ……熱気がっ」
「術者の位置は」
「魔波確認。炎の向こう、屋敷の入り口だ!」
ガイツが目を細める。
やがて炎の向こうより現れたのは、顔半分が焼けただれた眼鏡とコート姿の男。
見覚えのある顔にガイツが目を見開く。
「……手配レベルB、『火事場』のゴドロイ。やはり『酒飲み』ワーヴローと一緒に居たか」
「――本当なのかガイツ、あいつが……」
「ああ。俺が――二年前に一度取り逃がした手配者だ」
「待てっ。まだ隣に誰かいるッ」




