「雑魚散らし」
◆ ◆
「うぎゃんンッッ!!?」
「ごがっ……!!」
「こ、こんなとこまできやがったかクソ、てめえら得物を……って、」
慌てふためく悪漢らの前に歩を進める女性。
そのあまりに悠然とした歩みに、いきり立って得物を手にした悪漢達は揃ってあっけにとられた。
彼らの前に現れるは、たった一人の紺色の魔女。
「な……なんだよ、」「女ひとり!?」「馬鹿にしやがって……!」「しかも魔法使いだ、接近戦には弱えェハズだ!」「他の奴が来る前に畳んじまえば……!」
一気に緩んでいく緊張。
イミアは小さく顔を上げて目を細め、見下すように眼前の敵を一望し。
背後に色とりどりの魔弾の砲手を、展開した。
『うぉおおぉぉぉぉっっっ!!?』
悪漢達が慌てて交代する。
中には芝生に尻餅を付く者もある。
一見しただけで、イミアはそこに実力者がいないことを悟った。
(すべて出払わせていた……いいえ、恐らくはまだ屋敷の中に……)
「だっ、大丈夫だ!! この魔法知ってるぜ、属性別の魔弾の砲手だ!」
悪漢の一人が、誰しもの視界を埋め尽くさんばかりに展開されている魔弾の砲手を指し、誇らしげに言う。
「よく見てりゃァ大丈夫だ! あれはいっぺん発射されたらもう方向転換がきかねえんだ! ただのコケおどしだぜ!」
「な……んだよそうなのか!」「脅かしやがって!」「許さねぇぞあのアマ」「残念だったなァ!」「これでオメーのコケおどし作戦はおじゃんだ!」「フラフラ近付いて弾道を混乱させてやれェ!」
「いくぞオメーら! あの女に俺ら『フェイルゼイン軍』のコワさを教えてやれぇッ!」
地を踏み鳴らし、流動する扇のような陣形を取りながら接近してくる悪漢達。
そんな彼らから視線さえ外し、
「――よく解りましたわ」
何の動作も伴わずに、滞空する全ての魔弾の砲手を――――一発漏らさず悪漢達へと命中させた。
『!!?!???!』
「あなた方が、追尾式魔弾の砲手も予測できないザコばかりだということが」
魔波一陣。
巨大邸宅の前に敷き詰められた芝生一面が――否、そこを駆けていた悪漢達が七色の光に染まり、爆発する。
「うっひぇ……?! 魔弾の砲手ってホーミング機能とかつけられるの……?!?」
「なワケねーだろ魔術だよ、魔術師長の」
「そ、そうなのねやっぱね」
「無駄口を叩くな――――行くぞ」
イミアの両脇を抜け。
マリスタらガイツ班が、フェイルゼイン商館目がけて芝生を駆け抜ける。




