「大帰属」
「俺達を敗者呼ばわりすんのはちっとばかり気が早ええようだぜ、ガキ――テメェがのうのうと本部に連絡なんぞできたはずはねぇんだよ」
「……血の出過ぎでおかしくなってるの? そんなハッタリが――」
「そうか……行き違いだか信用されてねえんだか知らねえが。ともかく事はそうお前らの思い通りに運んじゃいねぇ……!」
「――、」
「カシュネ、こいつはこれ以上やると死にかねねぇ。別の奴使ってアタシが吐かせ――」
「『兵は拙速を尊ぶ』」
「!?」
「今更遅せェよ。お前ら利益でくっついてる、仲間でも何でもない一団と違って――俺達は国や守りたいもののために、一発の弾丸みてーに素早く動く! 積み重ねてる思いと時間が違げェんだ!」
カシュネが眉根を寄せ、笑うロハザーを見る。
転がされている者達の前に歩み出たトゥトゥも、勝気な表情で見つめ返してくるプレジア勢に表情を険しくする。
「……『誇り』というやつ? くだらない。誇りなんかにかまけるから秤にかけるのを忘れるのよ」
「ホラまた秤だ」
「!」
「死に損ないが――」
「大丈夫だ!」
「――ァ?! 何が大丈――」
「お前らにもきっと解る。帰属する場所があるからこその強さってやつが」
「・・・・・」
「……?」
「…………」
それぞれに黙り込み、ロハザーを見る三姉妹。
(――頼んだぜマリスタ)
その顔が希望に満ちている理由など、分かりはしても解る者はいなかった。
(ビージ、そして兵士長……!!)
◆ ◆
「王女の情報を提供した者だよ」
『………………』
悪漢達は固まったまま、スス汚れたローブを着たガイツ・バルトビアとビージ・バディルオンを見つめ――やがて、片方が意味ありげな顔で薄く笑った。
「……おォ、そうかそうか。あの裏切者サンかよ」
「そうだ。新たな情報がある。ノジオス・フェイルゼインは今もギルドハウスに?」
「ああそうだ、まっすぐ進んでけ。先の奴が案内してくれる」
「分かった」
悪漢らの前を素通りし、重い足取りで進んでいく二人の偉丈夫。
その背後で、悪漢らはゆっくりと得物を振りかざし、
背を向けた二人のローブの内側から放たれた魔弾の砲手が腹部を直撃、爆風と共に吹き飛んだ。
『ごォあ――――ッ!!?』
「……そうか。貴様等のような末端にも、裏切者が俺達のような者ではないと知れているわけか」
ゆっくりと振り返るガイツとビージが、汚れたローブを脱ぎ捨て。
物陰に潜んでいたイミアとマリスタから、アルクスのローブを受け取る。
「その二人は拘束しろ。色々と聞けることがありそうだ」
『はいっ!』
「ぎゃっ! く、くそ他にもっ――」
マリスタやアルクスらの手により縛り上げられていく悪漢二人。
ビージは一気に緊張の糸を緩ませ、口で呼吸しながらガイツを見る。
アルクスのローブに袖を通し、兵士長は眼前に林立する石造りの通りを見据えた。
「行くぞ。敵の本拠はもう目の前だ」




