「子どもたちの異世界」
「っくはッ」
「ロハザー!」
「生まれた時に聞きたかったぜ――その言葉をよッ!!」
ロハザーにまたがり胸倉をつかみ上げ、トゥトゥは更に追い打ちをかけていく。
かけていく。
かけていく。
かけていく。
「解るワケねーよ――テメェみたいなっ、」
血が飛ぶ。
「お――オイガキっ!!」
歯が折れる。
「光の――異世界しか知らねぇっ、甘っちょろいッ、」
鼻が潰れる。
血が飛ぶ。
血が、歯が、
目が、
「のぞいた闇におびえて暮らすことができる身分の奴にッ、闇の底の住人のことが解ってッ――――たまるかァッッ!!!」
「頼むからやめてくれぇッッ!!!!」
ファレンガスの命乞い。
顔がぐしゃぐしゃになったロハザーに、トゥトゥはなおも指輪のはまった拳を振り上げ、
「あねさま。それいじょうはホントにあぶないわ」
かち割れている額めがけ、渾身の一撃を叩き込んだ。
血肉がえぐれ弾け、地に鮮血を吹き散らす。
「ロハザァァァァッッ!!!!」
頭部に小さな血だまりを作りながら、ロハザーはうつぶせに地に伏した。
「ハァ――――ハァ――――ハァ、」
「野郎……野郎この、クソガキがァァっ――!!」
「ケネディ先生抑えて。ここまでを無駄にするつもりですか」
「マーズホーンッッ! あんたここまでっ」
「ここまで、我々は彼女らを殺さない選択をしてきたのです。ハイエイト君の意志に共感して。それを無駄にしてはいけない」
「オイオイオイオイオイオイッッ!!!」
トゥトゥがロハザーの右腕を踏み抜く。
腕があり得ない方向へ弾むように曲がり、落ちた。
ロハザーの苦悶の絶叫が倉庫中へこだまする。
「しゃべんなっつわれたのを忘れたのかザコ共、ザコ共ザコ共ッ!! 何盛り上がってんだよ、加減くれェ知ってんだよバーカッ! どれだけアンダンプで生きてきたと思ってんだ」
『……ッッ!!』
「ははははははッッ!!! 雁首揃えてバカ・バカ・バカ・バカヅラぶら下げやがってッ! 誰がガキ三人に取っ捕まってアホさらしてるテメェらみてぇなのの言葉信じるってんだよ!? エラそーにトリヒキだのコドモヲマモルだのぬかしやがってそのご大層な信念の果てがこの結果だろうがンのクソザコバカゴミ負け犬共がァッッ!! そんなんだから滅ぶんだよこの国はァッ!! そんなんだから滅ぶのを見てるしかねェんだよテメェらはァァァッッ!!!! ハァ――――ハァッ」
「あねさま。ツバがとんでいる、わ――」
静謐、否無関心を貫いていたミエルの言葉が途切れる。
息を乱したトゥトゥがその視線を追った先には――額から流れる血に顔を沈ませながら、その顔を悔しさに震わせながら――――はれ上がった目から涙を流すロハザーの姿。
『…………』
「……間違ってるっ。こんな……こんな子どもが、そんな世界にしか生きられねえなんて間違ってる……ッ!!」
「…………なけばなにかがかいけつするのですか。お子さま」




