表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1073/1260

「ファレンガス・ケネディ&アドリー・マーズホーン」



 雷精化眼鏡が雷速らいそく移動で土精化中年を翻弄ほんろうする。

 岩の鎧に覆われたファレンガスは移動速度こそ変わらないものの――雷速についていける速力も動体視力も持ち合わせない。



 故に撃たれる。

 超速で動き、一撃離脱(ヒットアンドアウェイ)を繰り返す雷精に打たれるままになる――――



「せ――先生ッ!」

「ツハハハッ、どしたどしたジジイッ……そんなもんかッ!?」



 雷光らいこうに混じり。



 闇に打ち消される光が、空気にチリと消えていく。



「くっ……」

「どうしたの? もっと楽しませてちょうだいよ――光を相手取るのは久しぶりなのだから!」



 見開いた目を更に血走らせ、魔波まはに長髪を乱れさせながら女がわらう。

 アドリーの放つ光の波動は黒き濁流に徐々に押し削られ、その勢いを減じていく。

 アドリーもそれに合わせ後退し続けている。



「終わりだぜ、オッサン――!!」

「さあ、もう終わりなの――!?」







     だな」

『そろそろ

     ですか」



『!!?』



雷猟らいりょう」のよろい四肢ししから崩壊し。



 「黒花くろばな」の足元から、暗色のツタが立ちのぼる。



「殴り続けてりゃどうにかなるとでも思ったのか? ヌルいヌルい――――そんなヤワな体術たいじゅつじゃ俺の鎧はくだけねえッ!」

「ッ、クソジジ――――ィべ、ぇ?!??!」



 先行放電ストリーマーを読み取ったファレンガスの岩石パンチが「雷猟」の顔面をとらえ、吹き飛ばす。



「バーカ。どんだけ速かろうが行く先がわかってりゃカウンターし放題なんだよ!」

「て、めェ――――!!!」

「そら早く立て直せ。でねーと――今度はテメーがサンドバッグだぞ!」

「ぶぎゃ、が、ぼ、お゛ど、がぅべ――――!!??!」



 防戦一転、四肢にだけ効率的に岩の鎧をまとったファレンガスが「雷猟」を追い打つ。

 己の一撃とは比べ物にならぬほどの重撃じゅうげきが、「雷猟」の身体を余すところなく蹂躙じゅうりんしていく――――



(何モンなんだよこのオッサンは――ただのガッコの先公だろッッ!???!)



「ずっ……がァ!!」



 街路に落ち、地面を砕き割りながら吹き飛んでいた「雷猟」が瞬時に体勢を立て直し、ファレンガスのあごに一撃する。

 さすがに(ひる)んだ茶色の男の隙を逃さず瞬転空(アラピド)、「雷猟」が大きく距離を取り――――



 ――――視認も出来ない真下から突き出た街路の拳に背を貫かれ、天へ吹き飛ぶ。



「が、ぁ――――!!!?」

「必殺、」



 力無く空中で一回転した「雷猟」。

 雷光の憑代(ライナー・ミュース)が完全に崩壊した生身の身体で、彼は、



「――ド、畜生が、」



 天高く伸びる岩の腕から枝分かれ自分に迫る、大量の岩の拳を呆然ぼうぜんと眺めた。



「――――土竜の行軍(百裂パンチ)!!!」



 全身殴打。



 岩の拳が砕けるほどの衝撃を百発身に浴び、「雷猟」は地に墜落ついらくした。



「……今の音は……っ」

「向こうも片付いた、ようですね。まったく、『必殺』だなんだと騒ぎ過ぎですよ。近所迷惑な』

『なんて連絡をする余裕があるってことは……そちらも?』

「ええ。今終わるところです」



 アドリーの目の前。



 そこには闇をすっかり吸収して(・・・・)成長した謎の植物と――――今まさにその植物のつたに絡めとられ動けなくなってきている、「黒花くろばな」の姿。



「暗所で微量びりょうに生み出される闇の魔力を吸収し、成長する植物です。それを少々改良してもらい、闇属性に対抗できる植物として品種改良してみました」

「馬鹿な……そんな植物の話なんて聞いたことが」

「ないでしょうね。試作段階で私しか持っていませんから」

「……だとしてもいつの間にッ……」

「最初に。めくれた床の石材せきざいの下へ、つま先で種を埋め込みました」

「……!! あのとき、」

「光の魔法と、私の劣勢の演技に上手く注意を引き付けられてホッとしましたよ。さて――」

「ッ!?ァ――ぁあアアアッ!!!?」

「!――おやおや、」



 ビクン、と女が背中をらして野太い悲鳴を上げ始める。

 アドリーがその細目を開き、怜悧れいりな瞳をのぞかせた。



「改良は成功のようですね。まさか術者に侵入(・・)してまで闇の魔力を吸い取ろうとするとは」

「あ、が、が……あああああああっ!!!」

「――ではさよならです。『黒花』さん」



 差し伸べるように、「黒花」に手を向け。



 魔術師は、光弾の砲手(ライトバレット)の連弾を闇の魔術師へ打ち込んだ。



「ぎ――ァ、ギャ、えケ゜ッッ!!!!!」



 ――光に枯れく植物のつたに、絡み付かれたまま。



 光属性の魔力回路(ゼーレ)活性化による高負荷で全身の魔力回路(ゼーレ)を破裂させられ、「黒花」は血塗ちまみれになりながら事切れていった。



「……むごい殺し方を、なさるのですね」

「戦争中ですよ。ペルド君」



 返り血を拭いながら、普段と変わらぬ穏やかさでアドリー。

 静かに生唾を飲み込み、ペルドは「すみません」と謝罪した。



「状況は?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ