表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
107/1260

「非力の没入」



 ぽかんとするシスティーナとパールゥ。

 マリスタの決然とした表情から発せられた問いに、ナタリーは思いきり目を細めた。




◆    ◆




「じゅ、う……っ」



 今日は順調だった。

 生活に必要な行動も、授業も、合間の休憩も、全て予定していた時間通りに終わっている。

 シャノリアやマリスタが絡んできそうな瞬間はあったが、それもすんなりと首尾よくかわすことが出来ている。上々なのではないだろうか。

 あいつらへの対応は――特にマリスタについては、以後一切これでいい。俺の復讐(目的)にとって、あいつらは『その他大勢』で何ら問題はない。

 逆説的に言えば、俺とは疎遠そえんの方があいつらにとっても有意義というやつだろう。

 さて。何かを習慣づけるのに必要な時間は二ヶ月ほど。だから、あと六週間ほどを耐えれば、時間を分刻みで意識する必要もそう無くなってくるはずだ。



「じゅう、いちっ……!」



 読書のペースも、体が覚えてきた。

 読書の記録も、だいぶ体裁ていさいが整ってきた。

 この調子でいけば、順当に知識は増えていくだろう。



「じゅうにっ……」



 リシディア語も、一先ひとま基本表音文字(アルファベット)は一通り識字しきじ出来るようになった。

 後は単語を覚えつつ、なるべく早く文法に着手して、例文れいぶんを暗記、平行して長文を速読・シャドーイング――そういえば、シャドーイングが出来る教材が見つかっていない。探さねば――・暗記して、受け答えの選択肢せんたくしを脳内に増やして……その辺りまでくれば俺の世界の外国語学習と全く同じだ。

 早くその段階だんかいぎ着けたい。



「じゅう、さん……っ、」



 シャノリアの教えもあり、魔法の訓練も大分だいぶ軌道きどうに乗りつつある。

 今では初級の魔法書を読みながら、魔法の試し打ちさえ可能になってきた。――一度魔弾の砲手(バレット)を撃ち過ぎて吐血とけつして以降は、精神的疲労(MPゼロ)への配慮はいりょもそれなりに出来ている。

 あの疲労は長引くときは長引くもので、酷い日は一、二時間に一度は軽く吐血していた。ハロウィンの仮装でそんなことをしてる奴が居た気がする。笑えない。

 別に病弱な訳でもないのにこのザマだということは、きっと精神的疲労(MPゼロ)の症状は誰しも同じなのだろう。



「じゅう……よっ、ん……!」



 そして、いま最もネックとなっているのはこの……肉体訓練だ。

 こればかりは以前の生活でも、完全にノータッチだった。

 義勇兵として、また目的の為にある程度の筋力が必要になるとはいえ、つちかわれたものがまったくゼロの状態から始めるのには限界がある。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ