「居住区の戦い――②」
閑静だった居住区はにわかに騒がしくなり、得物を携えた悪漢達がプレジア勢の現れた南通路に殺到する。
格好の餌食だった。
「来やがった来やがった……無理すんなよてめーら。こっからは俺の後ろを付いてこい!」
プレジア勢の戦闘に立ったファレンガス。
その足元、石材の街路から茶色の閃電が立ち昇り――街路を破壊して盛り上がった。
『!!!?』
破裂寸前の風船のようないびつな街路の膨張。
それは一瞬のうちに悪漢達の足元にも及び――とっさに跳躍した一部の者を除き、蛇のようなうねりを伴う礫の手榴弾となって爆発、悪漢らを一人残らず戦闘不能に追い込んでいく。
「うおー、やっぱ伊達じゃねえよなケネディ先生」
「普段ちゃらんぽらんなのにな」
「ボサッとすんなガキども! 避けた奴らはみんなそれなりにできやがるぞ、気ィ抜くな!」
「わかってますとも――行くぞヴィエルナッ!」
「うん!」
大小様々な石造りの邸宅の上に、プレジア勢が躍り出る。
ロハザーの眼前には既に切っ先が迫っていた。
「!!」
「ヌルい――――っ!?」
長髪の細目が、手から刀を落とす。
腕だけが空振った長身の剣士は直後、放たれた魔弾の砲手を避け後退し着地――――に失敗する。
「!!? な、」
「どっちがだよ。テロリスト――――ッ!?」
ロハザーの真横を風が抜ける。
腕にくくり付けられていたククリ刀が、引かれた腕に従いロハザーの腕を斬り裂く。
はずが――裂けたのはアルクスのローブだけだった。
「ほう。いいモノを着てますね、ボンボンは」
「オメーもな。このローブを一発で抜きやがる武器たァ」
「ええ。一度味わってみる価値、ありますよ――!」
投擲。
真っ直ぐ放たれたククリ刀が持ち主が操るヒモの振動を受け、滅茶苦茶な剣筋を描きながらロハザーに襲いかかる。
(ローブでこのざまだ。たぶん障壁も抜いてくるな)
瞬転。
一瞬にしてククリの攻撃範囲から脱したロハザーは、
「そこですね」
それを見切った男が放った針によってヒモの縫い目を貫かれ、地面に突き立った針を支点に高速回転を始めた刃によって二度目の斬撃を受けた。
「うッお!!」
足を覆っていたローブを犠牲に何とか回避。
しかし地を転がり態勢を立て直した時には、
「ヌルいのは君でしたね」
同じく瞬転で距離を詰め、回転しきったククリをつかみ振りかぶる長髪細めの男の一閃が――
男は足から崩れ落ちた。
「っっ! っさっきからどうなって」
「どうだろな? まだ結論は出ねーぞ、テロリスト……!」
しっかりと体勢を立て直し、不良のように地に足を着き座ったロハザーが、首に冷や汗をかきながら笑った。




