「第2王女――③」
「誰も信じてないんじゃない、ココウェルのこと。何の信頼関係も無いのに、国を守るために協力、なんてできるワケないじゃん」
「……子どもの理論ですわね。夢から覚めなさいなお嬢ちゃん。大人の世界ではね、理解せずとも足並みそろえて協力しなければならないことばかりですのよ」
「いつまで品定めする側に立ってるつもりなの?」
「……あきれてものも言えませんわね。兵士長、さっさと話を進め――」
「べらべらしゃべってないで早く対等に下りてこいッッ!!」
「――言わせておけば小娘ッ!!」
イミアが正面から、マリスタのあごを手でつかみ上げる。
マリスタは一息でそのつかみから脱し、泣きはらした目でギロリと彼女をにらみ付けた。
「っ離せこの年増ッ!」
「tっっっ――――――――一体誰にものを言っているつもりなの、アルテアスの出涸らし風情が」
「そらボロが出る出る!! あんたはさっきココウェルのこともデガラシだと言ったわ。これまでの話といい、王女をどう思っているか一目瞭然よ! そんなあんたが裏切者じゃないなんてどうして言えるワケ!?」
「プレジアの分際で――」
「風情分際お嬢ちゃんデガラシ、人を貶してないとまともに話も出来ないのかッ!!」
「兵士長ッ!! この餓鬼を黙らせなさい「うちの兵士長に命令すんな王宮魔術師ッッ!!!」
「どうして止めないんですのあなた達はこの餓鬼をッッ!」
イミアがプレジア勢に言い放つ。
そう、確かにこれだけマリスタが暴れ始めているにもかかわらず――ガイツに制されたサイファス以外、プレジアの者達は誰一人としてマリスタを止めようとはしていなかった。しなくなっていた。
それが、プレジアの総意。
「……目に余ります。魔術師長殿」
「な、」
「信頼は戦の要です。最重要といってもいい。勝利を、力を、仲間を信じるからこそ、我々は互いに戦いで最大限のパフォーマンスを発揮することができる。そして今我々が信じるべきは互いの力、戦いの勝算、何より……『皆の守りたいという思い』です」
「……何を、」
「『理解せずとも協力しなければならない』、その通りです。この戦い、突き詰めれば人によって守りたいものは異なるでしょう。家族、友人、国、この土地、正義、エトセトラ……守りたいもの、そのすべてを理解するなど到底不可能です。人によって優先度は違う、何をもって『守り切った』とするのかも違う、守るため犠牲にできるものも違う、故にその都度話し合わなければならない場面も生まれる。しかしすべての前提として――――今ここで戦う全ての者が、何かを守りたいという意志を持つことは信じるべきです。信じることができなければならない」
「私だってそう。兵士長だってそう。――ココウェルだってそうです!」
「!」
「私達は……ココウェル・ミファ・リシディア王女殿下の中に、確かな救国の意志を感じています」
「……国の危機を知った時。あいつ、自分も連れていけと言って聞かなかったんですよ? 記録石で敵のボスがリシディアをさんざんバカにしたときは、地団駄踏んで叫び散らして悔しがってたんですよ!!? そんなココウェルを少しでも知ってたんですか、魔術師長は!!?」
「そ、それは」
「どうしてあんなに国を想う王女を邪険にしてるのよ、バカリシディアはッッ!!!」




