「第2王女――②」
〝ああそっか、解った。分かったよ。どの本にもあんたの写真が載ってなかった理由。恥ずかしいからだ〟
〝あんた、このままいったら自動的に次の王様ってこと?〟
〝国民に顔も知れてなくて、人望もなくって。……私でも解っちゃうんだけど、解ってる? 潰れない? この国〟
(――――ああ、)
マリスタは解る。
解ってしまう。
(――私。私、なんてこと、)
ほとんど知らないココウェルの日々が、手に取る様に解ってしまう――
〝ほんと、あんたが王様じゃなくてよかった!〟
「――国を背負う覚悟も器も持ち合わせず、ただ権威を笠に着ることだけを覚えてしまった虚け者、国の恥。それが我々が第二王女と……いえ。将来的には女王と仰がねばならない人物の姿なのです」
「…………」
〝我ら選ばれし貴族の手で以て、死にぞこないの王族の手からこの国を取り戻すのだッ!!〟
――これまでの絶望とはまた違う閉塞感が場を支配する。
既に戦士の約半数が命を犠牲にした戦場。
しかし、その果てに救われるのは老い先短い老王と、未来に光無き虚け姫。
果たして、この戦いを勝ち抜いたとして。
「リシディア」という国は、この斜陽を切り抜けることが出来るのだろうか、と――
「――この話を共有する機会が持てたのは、ともすると幸運だったのかもしれませんわね。ともかく、第二王女ココウェル・ミファ・リシディアとはそのような人物であるのです。当然、その程度の知能しか持ち合わせていないと考えて、今後の方策を練るべきですわ。故に、王女殿下が我々の駆け引きに気付いている、などという妄言は――」
「知能低いのはあんたでしょ」
――王女の「嘆き」を知る、マリスタ・アルテアス以外は。
「――は?」
「私はハッキリ聞いたんです! 何度でも言います、あいつは全部気付いてた。全部気付いて、それでもそんな自分を受け入れて――リシディアの為にできることをしようって、だからここまで帰ってきた! 私達と一緒にお城にだって戻ろうとしたッ! それが『その程度の知能』呼ばわりってどういうことなんですか!?」
「妄言を何度繰り返すおつもり? 私達はこれまでずっとあの方を――」
「だとしたらあんた達の目は節穴だわッ!! 確かにココウェルはムカつく奴よッ! すぐ人見下すし暴力的だし実力は全然ないしムネは――」
「あーあーあー、分かりましたわ分かりましたわ。ですからそのみっともない泣き顔はどこかその辺の隅で勝手に流してなさいな。お嬢ちゃん」
「――――」
――肩で息をしている自分に気付く。
マリスタの頬には、ぼたぼたと垂れ落ちる涙が伝っていた。
(――これだ、)
眉を極限まで吊り上げながら、「お嬢ちゃん」と言い放った女を見る。
「――裏切者が、」
(この目が、この国を滅ぼそうとしてるんだ!!!)
「裏切者が出るわけだ。魔術師長がこのザマじゃあ」
「……ザマ、ですって?」




