「第2王女――①」
〝表向きだけ仮初の団結をしながら――――結局テメェらは水面下で争い続けてるじゃねえか。信頼も何もあったもんじゃねェ〟
〝テメェらの中でもトップの奴らしか知らなかったはずだぞわたしの存在は!〟
〝クソ偽善者共がよッッ!!〟
「私達が全然協力できてないこと、裏切者がいること……ココウェルは全部気付いてたんですよ!」
「……はい?」
「信用されてないんです私達も、あなた達もっ!……したくっても出来るはずないっ」
「…………」
「当然だと思いませんか?……あいつが私達を信用できないのは、プレジアとリシディアが、こうやっていがみ合う姿を目の当たりにしてきたからだと思いませんか?」
「はっ」
一瞬だけ。
呆れ果てた、という風情に、イミアは笑った。
「……何がおかしいんですか。なんで笑った今ッ!」
「マリスタっ」
「いえ。別に何も?」
「今の笑いは」
ここまで沈黙を貫いていたガイツが目を細める。
「どういう意図のものです。魔術師長殿」
「……単純に、おかしかっただけですわ。たかだか数日の交流で、殿下を解ったつもりになっているそこの小娘が」
「わ――解ったつもりも何も、私は本当にココウェルから――」
「『ココウェル』ではありません。『第二王女殿下』、です。あの方に対する呼び名など、それで十分ですわ」
「……十分?」
――空気が変わる。
〝魔弾の砲手魔弾の砲手魔弾の砲手魔弾の砲手ばりぇぴぽっっ!!??!?!〟
〝この子、もしかしてメチャクチャ弱いんじゃ……!?……〟
イミア・ルエリケが――国に仕える魔術師の長が何を言おうとしているか、マリスタにも察しがついてしまう。
「一度しか言いません、よく覚えておきなさいなプレジアの皆々様。王族とはその名の通り、この国を統べる資格のある血筋です。直接国家の運営に携われない年齢であったとしても、その発言には社会に十二分な影響を及ぼすことができます。事実リシディア第一王女、ヴィリカティヒ・セラ・リシディア様は十代も半ばの頃から――今も世に残る、『貴族制度撤廃』に向け動かれていたと聞いています」
〝黙れって!! 死ぬかお前、なあ!! ははは!……誰に向かって口利いてんだッ!!〟
〝誰と喋ってるつもりなの、お前。たかが大貴族の分際で。王女の御前だぞ身の程を弁えろッ!!! アハハハハハ!!〟
「……それが何だって、」
「その様子では、あなたも見たのではなくて? 第一王女とは似ても似つかない、第二王女の人もなげな傲慢ぶりを。お城でも一緒でしたのよ。体面は取り繕ってらっしゃいましたけど――」
遠く疲労と失望をにじませた目で、イミアが告げる。
「第二王女はリシディア家始まって以来、最悪の『出涸らし』だったのですわ」




