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「暗転世界を照らすのは」



「……それでわたくしが刃を収めると思ってますの? こうなった以上、もう共闘などと――」

「治療をしぶったのは、そういう可能性も考えてのことだろうと思っていました」

白々(しらじら)しい。いまだ私達わたくしたち味方のつもりでいられると思ったら大間違いで」

「総員武器を下ろせ」

「…………」

「が、ガイツ、」

「下ろせッ……!」



 静かな厳命。



 アルクス達は互いに周りを見合いながらも、兵士長の命に従った。

 ガイツは閉じたまぶたに疲労をにじませながら口を開く。




「……正直、わかっていない。裏切者は、本当に我々の中にいるかもしれない」

「ほぼ確定でしょう。事実、あなた方が現れてから状況は悪くなる一方ですわ。あってはならないことばかりです――治安部隊は生き残りさえ壊滅し、ヘヴンゼル・グウェルエギア両学府も完全倒壊。王女までも敵に渡ったかもしれないなんて――これ以上悪くなりようがありませんわ。ことが終わるまで、大人しくここで囚われていることです。永劫の(スピタスド)――」

『!!!』

「だがもう沢山だ(・・・・・)

「――…」



 仮初の就縛(パティゲルト)上位互換じょういごかん魔法――永劫の檻(スピタスド・ヴァール)が、発動途中で止まる(・・・・・・・・)

 マリスタをかばっていたサイファスが目をわずかに見開く。



(!? え――詠唱えいしょうじゃなく、魔法を(・・・)途中で止めたのか!? そんなこと――)

「……沢山とは?」

「ただの合理ごうりです、魔術師長殿。確かに裏切者はいるのでしょう。それも敵に知らせるだけの時間を持っていた我々プレジアと――最初の会議に参加した、我々以外の五名の中に」

「何を馬鹿な。頭が裏切ればその部下が裏切っている可能性も――」

「ですが少数です。決して過半数ではない」

「頭は大丈夫ですか? その少数の裏切りによって、既に私達の半数が壊滅していることを理解してらっしゃる」

「だとしても不合理です。わずかな裏切者のせいで、残り半数もの力を……俺は失いたくない――――――ああそうさ。失ってたまるものか」



 周囲に光る永劫の檻(スピタスド・ヴァール)による連環れんかんの光に照らされた瞳が、イミアを鋭く射貫いぬく。



「敵の思惑もあんたらの疑念も関係ない。疑心暗鬼ぎしんあんきに陥り、本来発揮できる力を発揮できず国を滅ぼされるなど、俺は我慢ならん!」

盲信もうしんですわよ。そんなだから内部に裏切者が発生するのではなくて?」

「決め付けてかからないでくださいッ!」

「マリスタっ」



 サイファスの懐から抜け出し、マリスタがガイツの横に立つ。

 イミアはまたも目を細めた。



「黙りなさいな小娘。こっちの台詞ですわよ、それ。大体あなたのような頭もカラダも足りない小娘が裏切者の可能性に行き着いていること、それそのものが犯人を示しているのではなくて?」

「……なんで知ってるか教えましょうか? 王女から……ココウェル(・・・・・)から直接聞いたからです!」

「口を慎みなさい小娘ッ! 不敬ふけいにも限度がありますわよ!」

「あいつすっごく苦しそうだったっ!」



 地に叩きつけられた言葉が、反響を周囲の全員に伝える。


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