「Interlude—21」
「それがあれの本性でしょう。大根役者にも程がありますが――あの様子だとあれだけではないでしょう」
「……これ以上に、どんなネコを被ってるかも知れない、ってことね」
「腹に一物抱えているのは間違いないと見るべきでしょう。それだけでも警戒するに余りあるというのに、加えて他の素性も一切知れないのですから。これで気を許せるほうがどうかと思いますけどね」
「だから、ケイはそんなんじゃ」
「そのお人好しは確かに貴女の長所です、マリスタ。でも、私は忠告し続けますよ――いつか彼は、貴女に大きな大きな災いを齎します。私のこういう勘、外れたことないでしょう」
「わ、災いってそんな大袈裟な……」
「うーん……まあその、火中の人であるのは間違いないからね……でも、普通に心配だな、私」
「心配?」
頬杖をつくシスティーナに、表情を硬くして質問を投げるパールゥ。
「義勇兵コースの友達からの聞いた話なんだけど。アマセ君、最近は夜遅くまで訓練施設にこもってるらしいわ。根の詰めすぎで体調崩さないといいなー、と思って」
「訓練施設……」
マリスタの頭に、少し前のテインツ・オーダーガードとの騒ぎがよぎる。
彼女は当時の、ほぼ真実と相違ない様子を、様々な人からの噂で知り得ていた。
(夜遅くにって……そんな時間に使って、また同じようなことが起こるかもしれないって思わないのかな。あいつは)
その日のうちに完治したとはいえ、後頭部が裂け、血塗れになるほどの大けが。
それをマリスタにさえ一切話そうとしない秘匿。
そして、先ほどの余所行きの笑顔。
(……やっぱだめだ。待ってるだけじゃ、あいつは自分のことを話してくれそうにない……まったく。私がこんなに気を揉んでるっていうのに、あいつは何を考えてるのか)
マリスタは眉根を寄せ、圭にしつこく関わる決意を込め、目の前のカップから紅茶を飲み干し、
〝――マリスタ、知ってる? 彼が何と、戦ってるか〟
〝私、訊いてくるから。だから、待ってて〟
ふと。
そういえば、自分のほかにも一人、似たようなことを言っていた少女がいたことを思い出した。
ヴィエルナ・キース。義勇兵コース所属の、グレーローブの少女のことを。
(……聞いてくる、か)
マリスタが教室で見ている限りでは、圭とヴィエルナが接触している様子はなかった。
(まさかヴィエルナちゃん、ケイの部屋に行ったりとか……いや、それはないか。ケイに誘われたわけじゃあるまいし。なはは…………じゃなくて。そもそも、面と向かってケイが答えるなら、私だって苦労してないし……でもそうなら、ヴィエルナちゃんはどうやって)
圭が夜まで利用しているという、訓練施設。
その言葉が、いやにマリスタの脳裏にこびりつく。
(――もしかして。夜の訓練施設で?――え、ヴィエルナちゃん、何してるの?)
見当違いな方向に加速していく思考を必死で押しとどめ、マリスタは程よい熱を持った紅茶を嚥下し、カップをテーブルに置く。
――子細はともかく。
こうなれば、マリスタ・アルテアスは動かなければ気が済まない。
「ねぇ、システィ」
「ん?」
「ケイが訓練施設にいる時間帯とかって……何か、聞いてない?」




