「後の祭り」
◆ ◆
「ロイ・ジェックス、ジェフリー・ハイム。死亡確認しました」
「アレックス・ポール、ジノ・フルフライト。同じく」
「……アルクスに関しては、これで全員確認が取れた。迅速な捜索ご苦労だった。少し休んでくれ。他は足りてる」
アルクスの隊員たちが、無言でガイツの前から下がる。
砂と汗で汚れた体に、照りつく日差しが疲労を投射する。
ガイツ・バルトビアは、居住区に近い通りの石垣に力無く腰かけていた。
『ガイツ、報告だ。――学園区はすでに跡形もない。だが生き残りを多く発見した。動ける教師と連携し、生き残りの救助にあたっている』
「そうか。ご苦労だった、兵士長。引き続き頼む」
『こっちの台詞だな。なんて覇気のない声をしてる。そんな死にかけの鳥みたいな声で陣頭指揮を執ってるんじゃあるまいな。そこには合流した魔術師長殿もいるんだろうが』
「……すまん、そうだな」
『まだ指揮を執るつもりがあるなら自分くらい常に奮い立たせろ。こんな情けない助言を二度とさせてくれるなよ、バルトビア兵士長』
「……アルクス、全隊員の所在がつかめた」
『! それで、』
「構成員の約半数の死亡を確認。そちらはどうだ。できる範囲で報告しろ」
『………………お前と共に魔術師長と合流後、すぐに学園区戦場付近へ駆け付けた。トルト・ザードチップと褐色の大男はすでに王都外縁の森へ戦場を映していたよ――お前の指し金か? ガイツ』
「ああ。報告は可能か? ボルテール兵士長」
言外に、急かす。
解り切っている絶望の報告を、先延ばしにする意味などない。
『……校医パーチェ・リコリスが生き残っていた。彼女を中心として、簡易救護施設の設置を進めている。……その。教師や……学生の中にも死者が、出ているということで』
「どの程度残っている?」
『……三分の二、といったところだ。でももう少し増えるかも、』
「全体として、残存兵力は約半分と考えるべきだろうな」
希望的観測を、遮る。
命の皮算用など、戦場でする意味はない。
黙ってしまったかなめの御声先のペトラに、ガイツは一呼吸おいて話しかける。
「喜ぶべき、なんだろうな。少なくとも半数は生き残ってくれた、この状況に」
『……また連絡する』
途切れる。
首にかけたタオルで顔の汗を拭いながら、ガイツは大きなため息を吐いた。
鋭い呻き声が、聞こえた。
ガイツが漫然と、目を向ける。
「が、ぼ……副隊長。魔術し、ちょう」
「しっかりしろタレス、おい、私が見えてるか、おい!――イミア様ッ!」
「…………!」




