「▇█▅▇█▇█▇▅▇▅▇█▇██▇██▇██」
ことは無かった。
「ッッ!――――ご、ぉ!?」
トルトの先を進みながらバンターが放った空圧。
それがバンターに向かった八匹の蛇をあっさりと瓦礫に変え――その先にいたトルトをも吹き飛ばす。
(やべえ、逃げられる――)
焦りがトルトの脳裏を苛む。
だが直後、
(――――あ?)
彼の脳を占めたのは、まったく別の燻りだった。
(今の技――――俺も使えるぞ)
空圧の中、拳を握り込み。
逃げるバンターへ、放つ。
〝うーわ。あんな遠くに拳圧ぶつけるとか、そんなことまで出来るんですか先生って〟
――空圧が、内から裂けた。
〝みたいだ〟
「――ッ!?」
異音に反応が遅れたバンターが空圧を真正面から受け、吹き飛ぶ。
バンターのそれとは違い、針のような圧縮された鋭さを持つトルトの空圧はバンターの鋼のような肉体を一部陥没させ――――鞭のようなうねる軌道を描き、バンターは瓦礫の山をいくつも貫通し、当初の道を大きく逸れた場所で静止した。
(……魔力を使わねえ分、奴の気配は探りにくい。近付かねぇと)
一息にバンターが吹き飛んだ場所まで跳び、砂煙の中に目を凝らすトルト。
しかし頭では全く別のことを考えてしまう。
(イグニトリオはこれを『遠当て』と呼んでやがったか。聞いたことはねえが、恐らく練気の闘法の一つのはずだ。似たそれらしい技を探し出す、あるいは編み出して使うことは出来ても――完全に同じ技にはならねぇ。なのに俺とあいつの技は、)
予期せぬ方角から。
瓦礫が吹き飛ぶと同時に――――針のような空圧がトルトを襲い、
(まったく同じだった――つまり)
トルトはそれを感知し、同じ技を放つ。
空圧が、空で拮抗した。
(「俺の体」は――――練気の闘法にも通じている)
爆風、そして――爆発。
気のぶつかりあった極点より、王都どの区画からでも視認できるほどの爆炎が炸裂する。
〝ハロー! また来たよ▅▇█▇█〟
(――ああ)
〝ねえ。どうし▅▇█▇█▇は、こんな▅▇█▇の?〟
(きた。)
〝「▅▇█▇█▇▇▅▇█」ッ……▇█▅▇█家のすべてが、お前▅▇█▇█▇▅▇〟
〝▅▇█▇█名前は、トルト・ザードチップ!〟
筋肉の大砲が。
バンターの頬を、貫いた。
「ッッ――――!!!」
瓦礫を砂のように弾き飛ばし、またも飛ぶバンター。
折れた奥歯を血と共に吐き出し、バンダナが作る影の下にある両目を見開いて――自分に明らかなダメージを与え始めた相手を見る。
「やっと追いついた」
垂れ下がった縮れた前髪に覆われ、わずかに見え隠れするトルトの目。
「逃げるなよ。もう」
虚無より昏い闇が、そこを埋め尽くしていた。




