「Interlude―19」
マリスタの抗議の視線。
不安げな顔をしたパールゥがシスティーナを手伝い、マリスタに向けて首を横に振った。――やがてゆっくりと、食堂が騒がしさを取り戻していく。
風紀委員の姿が消えたころには、マリスタの体からも力は抜けていた。
システィーナとパールゥが、ゆっくりと手を放す。
「あんな光景、最近になって何度も見たことがあるでしょう、マリスタ。貴族と『平民』の対立、そして『平民』への風紀委員会の弾圧。それが、これだけ堂々と行えるような場所に、プレジアはなってきてるってことです」
「……私の違うクラスの友達も、先週から学校に出てこなくなっちゃって。きっとあれも、風紀委員の人たちのせいなんじゃないかって、友達のクラスの人から聞いてる」
「ど、どうして学校に来なくなっちゃうのよ。いじめのせいで?」
「違いますよ、マリスタ。決まってるでしょう? 貴族――特にティアルバー家の力を笠に着た、風紀委員会の圧力で、ですよ」
「あ、あつりょ……!?」
「ティアルバー君の家――大貴族の影響力を使った圧力で、一族や、家族の社会的立場なんかを人質に取られた『平民』達が、学校に来られなくさせられてる。ってことね」
「な……なによそれっ!? そんなことがあって言いワケ、」
「それがあるのが、今のプレジアなんですよ。マリスタ」
「せ――先生たち!! 先生たちは何やってんのさ! 私今からシャノリア先生に――」
「そうですね。シャノリア・ディノバーツ先生は、きっと中立な――いえ、不当な迫害を受けている人には、分け隔てなく接していることだと思いますよ」
「だったら――」
「でも、ディノバーツ先生一人ではどうしようもないのです。ディノバーツ家と同じく、ティアルバー家も、このプレジア魔法魔術学校の、出資者の一人ですから」
「出資者――――あ」
「確か、マリスタの家も出してたわよね?」
「た、確かに父さんは副理事長をしてるけど……え。ティアルバー君と、シャノリア先生のとこも?」
「ええ。アルテアス、ティアルバー、ディノバーツ、そしてイグニトリオ……プレジア創立の際、四大貴族はどの家も競い合うように学校に資金を提供しています。ですから現在も、学校の運営方針に口を出せるほどの影響力を持っているのですよ」
「……ティアルバー君のお父さんが、今のプレジアを認めてるの?」




