「Interlude―18」
「社会のルールや世の理以外から抑圧を感じれば、それは全てイジメなんですよ。マトヴェイ・フェイルゼインがあなたに何をしていたかは知っています。とはいえ、やってたことは精々取り巻きを使って『大貴族ならば自覚を持て』とかなんとか言うことだけでしょうけど」
「えっ、それ、何で知って……」
「テインツ・オーダーガード、ビージ・バディルオン……あの辺は根っからの貴族至上主義を掲げる莫迦共ですけれど、マトヴェイに至ってはソレを口実に貴女を手籠めにしたいだけの見下げ果てた下半身男ですから」
(下半身男……言い得て妙ね。私も言い寄られたことあったな)
「ともかく、あれら衆愚にしてみれば、あなたは平民やケイ・アマセに与する、貴族としての自覚が欠片もない愚か者、でしょうからね」
(――と言いつつ、連中の行動には、ケイ・アマセへの嫉妬も多分に含まれていたと思いますけどね。見目麗しい、大貴族アルテアス家の令嬢に、無条件に肩入れされる美男が羨ましくて……というところですか。見え透くだけに気持ちが悪い)
「し、しじょうしゅぎ……?」
難しい言葉に眉根を寄せるマリスタを見て、システィーナがため息をついて笑いを漏らす。
「……また『貴族としての自覚が足りない』ってのが、マリスタ本人もちょっと気にしてることだっていうのが、チクチクくるポイントよね。クマが増えちゃうくらいに」
「ぐぅ……」
「な、なるほど……大変だね、マリスタ」
イジメの理由と方法、ついでに自分でちょっと気にしている悩みまでをキレイに分析されていることに釈然としない気持ちを抱えながらも、これといった反論を思いつくわけでもなく、マリスタは再び机に突っ伏した。
ナタリーが目を閉じ、ため息を吐く。
「まあ今となっては、別にマリスタだけに起こっていることじゃないのですけど」
「私だけじゃない? それって――」
ガタリ、と大きな音が食堂に響く。
生徒たちの談笑が消え、数多の目線が音の発生源――――食堂中央のテーブル、二人の風紀委員と一人の生徒の元へと集中する。
「……騒ぐな、ここは公共の場所だ。話は指導室で聞かせてもらう。リースベット・ローダン、お前を『平民』の貴族への敵対心を扇動する行為に参加した容疑で連行する。行け」
くせ毛の強い短髪の少女が、何か言いたそうにグッと口元に力を入れながらも、大人しく風紀委員に連行されていく。
マリスタが立ち上がろうとする気配を察知し、それをシスティーナが静かに押さえつけた。




