「遭遇、そして、」
一人ひとりが王国騎士に張る実力を持つという、プレジアの精鋭、アルクス。
選りすぐられたヘヴンゼルの学生達と王国兵、王国騎士、そして王宮魔術師長。
プレジアを襲ったアヤメ率いる集団を、その連携で一人残らず捕らえたマリスタら、義勇兵コースの者達と、それを支えたリセルやトルトなどの教師陣。
錚々たる面子、だと思う。
俺が出会った実力者の殆どがここに集まっている。
だが、俺は。
「これで説明は以上だ。時間が惜しい、すぐに行動に移る」
〝褐゛色゛の男゛と゛ッッ、絶゛対゛にっ、戦゛うな゛アァァ゛ァ゛ァァァァ゛ッッッ――――――――・・・!!!!〟
……より強い者との戦いを求めてここへ来た。
この国の事情はあるにしろ――俺の目的からすれば、むしろ味方が頼もしいというのはあまりよい状況とはいえない……
「…………、」
……その筈だ。
そんな俺が、今最も強く感じているもの――
〝彼ら『本物』は、リシディア全土に未曽有の戦禍をもたらしました〟
〝……全土?〟
〝ええ、全土です――――『本物』による被害を被った地域一帯は、後に地図上の地形をほぼすべて書き換えるハメになったそうです〟
「……不安?」
「アマセ君?」
「魔術師長殿。障壁を」
「――開門しなさい」
「はっ!」
そう、不安だ。
断じて落胆などではない。
この錚々たる面子に、地形を変える戦いが出来るとは思えない。
この錚々たる面子に、ヘヴンゼルの騎士長を瞬殺できるとは思えない。
だが出来るのだ。「褐色の男」には。
〝影に至るまで焼き尽くしてやるからよ――――!〟
リシディア全土でも指折りの実力者を赤子扱いできる相手に対して――――一体この錚々たる面子で何が出来る?
そんな不安が――俺の意識を曇らせる程の大きさで以て、「褐色の男」と出会う可能性に警鐘を鳴らし続けている――――!
◆ ◆
「――――待って」
息を上げていた百を超える精鋭部隊の中に、イフィの声がやけに通って聞こえる。
その言葉にガイツ、ペトラがいぶかしげに視線を交わす間に――イフィは、今まさに解かれていく障壁の向こうにいる人物を捕捉する。
――――やがて目を見開いたイフィを。
イフィが見ている人物を、先頭に立つアルクスが残らず認識し、総毛立つ。
それも当然。
何故ならその褐色の男は、百を超える軍隊を前にたった一人で、
「――嘘。敵の気配が無いのは何度も確認して――」
その敵意を隠すことも無く――
――否。
そんなものは関係ない。




