「トゲの数ならこちらが勝る」
◆ ◆
プレジアとヘヴンゼルの連合軍は、総勢百数十名にまで膨れ上がった。
戦争、と呼ぶには小規模にも感じるが……建物の密集する王都内においては、これ以上多くても動きにくいのかもしれない。
ゆっくりとした足取りでガイツとペトラが、そして王宮魔術師長のイミアと、ヴィエルナの兄アティラス・キースを含むリシディア治安部隊の生き残りが皆の前へと歩み出た。
「作戦を話す前に、特にプレジアの学生諸君には、よく聞いておいて欲しい事項がある。これから我々は、大きく二隊に分かれて行動するが……伝え聞いた編成に疑問を持った者も少なくないだろう。……言葉を濁すことはしない。我々プレジア側は、今より以後の作戦行動における編成および指揮権を――すべてリシディア・ヘヴンゼル側に委ねることとした」
『!!?』
――何だと?
「王都の地理に明るい者が指揮を執るべきであること、数で大きく下回るプレジア側が指揮官では隊の機動力に影響すること、など理由は多々あるが、最も大きな理由は――――我々が真に連合軍として共闘できるようにと考えてのことだ。……彼我の間に大きな溝があるのは事実であり――――」
……それを開けっ広げに話すのがまたガイツらしい、というか。
だが、それだけ団結力が――いざというときの戦力が欲しいことの裏返しでもあるだろう。
イフィの話では、敵の殆どは義勇兵でも数人から十数人を纏めて相手にできそうな、ろくな訓練も受けていない雑魚に過ぎないらしい。
だが、王都全域に十数人ほど存在している……所謂雑魚を束ねる「幹部格」の者達。
彼らの中には――無論、イフィが感知した限りでは、だが――一角の実力者も存在するのだそうだ。
実際その通りなのだろう。
「…………」
――鎖を自在に操り、一時はペトラやギリートを捕らえても見せたあの巨漢を思い出す。
対峙した瞬間に感じた「ヤバさ」――他の者とは一線を画した気配を、イヤな汗と共に今でもはっきりと思い出すことができる。
赤髪の人魔、ナイセスト、アヤメ――……本当の強者と会った時に感じる、「圧」としか言いようがないもの。
俺に足りていない、もの――
「飲まれてない? まだ会ってもない敵に」
「…………演説中だぞ。兵士長殿の」
「そうやって皮肉ってるあたり君にも聞く気無いじゃん。一緒だねー」
「…………」
「ははは、ごめんて――――大丈夫だよ、とまでは言えないけど。でも一応、ちゃんと周りも見てあげて。月並みなこと言うけど、僕らにはいるじゃないか。それなりに頼もしい仲間達と……何がどうしたって守らなきゃならない存在がさ」
……ギリートから視線を外し、改めて周囲を見渡す。




